第33話「何もない田舎の駅」


新幹線に乗り、聞いたこともないような駅で下車する。


そこから乗り換えて、ローカル線に揺られること1時間ほど。


自動改札もなければ、券売機もない。何なら駅員すらいない田舎駅で下車する。


チラッと見た時刻表には、無駄な空欄がたくさんある。


列車は、1日に数本程度しか運行されていないようだ。


景色も田舎そのもの。


自分が住んでるところも片田舎だと思うが、ここは本物の田舎だ。


山に囲まれ、少ない平地に畑があり、民家がまばらに点在している。



「すごいところに来ましたね・・・」


「ここはそうかもしれないな」


「と、言いますと?」


「これから車だ」



目的地まではまだあるらしい。


駅を出ると、そこは殺風景な広場があった。


バスロータリー・・・なのかもしれないが、バスロータリーというにはあまりにも寂しすぎる。


そもそもバス停が見当たらない。


そんな中、乗用車が1台停車している。


運転席の窓から顔を見せるのは、中寿ほどのおばあさん。



「おばあちゃん。ただいま」



そう声をかけたのは、岩船先生。



「佳奈美ちゃん、おかえり」


「こちら、生徒の村上さんね。電話で話した人」


「どうも。岩船春子(いわふねはるこ)と申します」


「あ、どうも・・・村上友彦です」


「私の祖母だ」



いきなり自己紹介されて困惑していたところに、岩船先生からの補足説明。


どうやら、岩船先生の祖母らしい。


ん・・・? 旅行と聞いていたが、なんで岩船先生の祖母が出てくるんだ?


疑問が浮かんだが、それを質問する前に、岩船先生が車の後部座席に入り込む。



「ほら、早く乗りたまえ」



先生が手招きするので、開こうとした口を閉じたまま車に乗り込む。


そうすると、車はゆっくりと走り出すのだった。


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