第32話「旅のはじまり」


まばゆい太陽は、雲一つない空に堂々と存在する。


日向にいれば、刺さるような日差しが肌を焼きつける。


俺が駅前に到着したのは、8時45分頃。集合時間の大体15分前。



「早かったな」


「もういるんですね」



岩船先生は、時間の15分前なのに既にいました。


涼し気なノースリーブブラウスに、キャミソールワンピースという服装。


私服の岩船先生は初めて見る。



「えっと、どこ行くんですか?」



旅行に行くというのは聞いた。


しかし、どこに、どの程度の期間で行くのかは聞いていない。



「黙ってついて来い。これ切符な」


「う、高いですね・・・」



高いというのは、値段的な高さ。


渡された切符に印刷されている値段は、数千円とはいえそれなりに高め。


財布の中には手持ちの資金を全部突っ込んできたが、足りるだろうか。


そう思ったのだが・・・。



「金はいらんぞ。私が払うからな」


「え・・・いや、そういうわけには」


「遠慮するな。私が誘ったわけだしな」


「は、はぁ・・・では、お言葉に甘えて」



それから電車に乗り込む。乗り換えもして、新幹線に乗り込む。


新幹線なんて、乗るのはいつぶりだろうか。


家族と旅行に行くようなことは滅多にないし、親族が遠くに住んでるわけでもない。


仮に遠くに行くとしても、車で行ってしまう。


なので、新幹線なんて乗る機会はほとんどない。



「結構、遠くに行くんですね」


「そうだな。私のお気に入りの場所だ」


「そうなんですか」


「君が気に入るかは分からないが・・・まぁあまり期待はしないでくれよ。何もないところだから」


「何もないんですね」


「自然が好きだからな」



なんというか、らしいと言えばらしい。


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