第25話「某現代戦をモチーフにした10年ぐらい前の作品」


あの雨の日から、平林さんは部室に来なくなった。


自分に関しては、中間テストで部活動が休止期間に入っても、部室には足を運んでいた。


それは、そこに必ずいる岩船先生から勉強を教えてもらうため。


テストが終わってからも、部室には足を運んでいた。


部活の活動日はもちろん。そうでない日も。


特に用事があるわけではないが、それが日課となっていた。


そんな日々が続いて、梅雨も明けようとしているある日・・・。



「村上、FPSゲームは得意か?」



唐突に岩船先生から訊かれた質問。


FPSゲームとは、ファースト・パーソン・シューティングゲームの略称。


広義的にキャラクターを一人称視点で操作するゲームだ。


最近だと、FPSゲーム=銃や武器を用いて戦うゲームという認識になっている。



「FPSですか・・・得意ではないですが、家ではよくやってますよ」


「何やってるんだ?」


「まぁ色々・・・最近は某現代戦をモチーフにした10年ぐらい前の作品やってますよ」


「ほう。武器なに使ってるんだ?」


「FAMASとか・・・」



FAMASはフランスのアサルトライフルだ。



「ということは、近距離でしか戦わないんだな」


「どっちかと言えば、味方の後ろにいる感じですかね。医療キットとかばらまいて、撃たれた仲間を蘇生してます」


「衛生兵じゃないか」


「ゲームの仕様では、突撃兵なんですけどね」


「味方の後ろにいるなら、もっと中距離から長距離を狙える武器にすればいいのに」


「例えば・・・」


「そうだな・・・アサルトならSCAR-Hとか?」


「連射速度遅いので却下です。そもそもアサルトって、近距離用の武器では?」


「私はAR160に3.4倍スコープ付けて立ち回ったことあるぞ」


「えぇ・・・」


「とはいえ、たまーにだが。いつもはP90で脳筋立ち回り」


「とにかく前線で立ち回る感じですかね」


「裏取りとか頭を使うことはしたくない」


「まぁ前線で戦う人がいないと裏取りって成立しませんからね」



そんな感じで、予想以上に話が盛り上がっていた。


例の手紙の件から何となく予想はしていたが、岩船先生って結構FPSゲームとかやるんですね。


いつも本ばかり読んでいる人だから、どうしてもイメージがつかない。


とはいえ、先生との共通の話題を見つけられたのは大きな収穫。


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