第24話「君の意見を尊重して」


どうすればいいのか分からなかった。


急に泣く平林さんを、見ていることしかできなかった。



「ごめんね・・・急に」



10分かそのぐらいで、彼女は正気を取り戻した。


そしてまた、相合傘で歩き出す。



「私が傘持とうか?」


「いや・・・でも」


「私の方が高いもんね。そっちの方が合理的だよ」



言われるがまま・・・と言うわけではないが、傘を彼女に渡してしまう。


平林さんの方が身長が高いのは事実だ。でもそれって、彼女の身長が高いわけじゃなくて、俺がちっこいだけ。なんというか、もう数センチだけでも身長が伸びてほしいところ。


まぁそれはどうでもよくて・・・。



「大丈夫・・・なんですか?」


「大丈夫って?」


「平林さんの・・・えっと」


「ん?」


「あいや・・・辛いことはたくさんあると思います。だから、無理に話す必要なんて全然ないと思うんです。でも、心配で・・・。無理をしてほしくないってのが、俺の身勝手な意見なんですけど」



急に泣きだすなんて、普通じゃありえない。


それだけじゃない。最近の平林さんは、どこかおかしい。


行動が奇怪なのだ。



「心配してくれてるのは、この前も聞いたよ。本当にごめんなさい」


「いや、謝ることでは・・・」


「最近はさ、友彦くんになら話してもいいかなぁなんて、そんなこと思ってたりもするんだよね」


「僕でよければ、聞かせて下さい」


「ううん、ごめん。話さない」


「どうしてですか?」


「これ以上、迷惑をかけたくないんだ」


「迷惑だなんて」


「迷惑になるの。佳奈美ちゃん・・・岩船先生にも、相当な迷惑をかけた。もう他人に、あんな迷惑をかけたくないから」


「・・・」



それが彼女の意見であり、方針であるなら仕方がないのだろう。


俺の本音は、話してほしかった。


でもそれは、俺の知的欲求という一種の欲が叫んでるのであって、彼女が自身の事情を話すことによって、物事がなにか良い方向に傾くわけでもない。


その日、平林さんを家まで送り届けた。


道中は終始無言だった。


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