第19話「屁理屈も理屈の一つ」
「少しは片づけたらどうですか?」
私はそう言う。誰に言ったのか。それは、佳奈美ちゃんこと岩船先生。
今日は部活の日ではなかった。にも関わらず、部室には私と佳奈美ちゃんの姿がある。
これは珍しいことではなく、佳奈美ちゃんはいつもこの部室にいる。
私はそこに遊びに来ているだけだ。
狭い6畳ほどの部室は、モノが散乱していて散らかっている。
このモノたちは、そのほとんどが佳奈美ちゃんのものだ。
「そのうちやるよ」
「そのうち? それでいつもやらないじゃん」
「平林、一つ良いことを教えてやろう」
「良いこと?」
「そうだ。人はなぜ散らかすのか。それは、その必要がないからだ」
「いや、片付ける必要はありますよ」
「ないね。そもそも片付けるとはなんだ? 答えてみろ」
「片付けとは・・・整理整頓ですかね?」
「整理整頓というのは、どういうものだ?」
「モノを整理して、いらないものを捨てたりすることですか?」
「いらないものを捨てるのは理解できる。しかし、モノを整理するのはなぜだ?」
「そりゃ、使いたいときに探さなくて済むからでしょ」
「私はこの状態でも、どこにどのモノがあるか理解できている」
「屁理屈言わないでください」
「そんなものではない。考えてもみたまえ。よく使うものというのは、乱雑に積み上げられたモノの上にくるはずだ。それはなぜか? よく使うからだ。散らかっているという状態は、一見非効率で扱いずらく見えるかもしれない。しかし、よく使うモノほど手の届く範囲にあり、逆に使わないモノは離れた位置にある。これを効率的と言わずしてなにを効率的と言おう」
言ってることは理解できるが、効率的なのかは疑問しかない。
所定の位置にあれば、よく使うものも使わないものも、一発でその在り処が分かるというものだ。
しかし、私が反論する前に、佳奈美ちゃんはさらに畳みかける。
「そもそも片付いているという状態は、モノが一定の場所に集まっている状態のことだろう。散らかっているという状態はどうだろうか。モノが一定の場所に集まっているではないか!」
そんな世紀の大発見みたいに言われてもねぇ・・・。
「いや、集まってませんから。部屋中に広がってますから」
「この部屋を一定の場所と定義すれば良いだけのはなし」
面倒くさいな・・・この人。
ただ単に片付けの出来ない佳奈美ちゃんでした。
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