第17話「1942の無線音声」


平林さんの家に到着した。


岩船先生に行って来いと言われてきたわけだが、いきなり押しかけて大丈夫なのか?


そうは思いながらも、インターホンを押す。



「はい」



対応してくれたのは、彼女の母親だった。


どう名乗ればいいのか分からなかったが、岩船先生の名前を出すとあっさり通してくれた。


彼女の部屋の前に立つ。一呼吸して、ノックをする。


返事は特に返ってこなかった。



「開けますよ」



そう言い、ドアを開ける。


平林さんの部屋は、無機質な感じだった。


フローリングの6畳ほどの部屋。


ベッドがあり、勉強机がある。


装飾などは特になく、インテリア雑貨もほとんどなかった。


パッと見で、彼女の姿は見えない。


しかし、ベッドに明らかなふくらみがある。



「平林さん?」


「いらっしゃい」



ひどく元気のない声だったが、それは紛れもなく平林綾香の声。


いつもの陽気さが、完全に失われた声だった。



「どうしたんですか。元気がないように見えますけど」


「大丈夫。それよりどうしたの?」



だるそうな身体を持ち上げ、ベッドから上半身だけ起き上がる。


寝起き・・・というよりかは、倦怠そうな表情をする。



「岩船先生から、これを預かっていまして」



そう言い、封筒を渡す。


すると彼女は、表情を少し変える。


なにか期待してそうな、希望を持ったような。そんな感じの表情。


無言で封筒の中身を取り出す。それは、一枚の紙だった。


その紙を見た途端。



「あは、あはは・・・」



そんな感じに、嗚咽をもらすように笑い、そして涙を流す。


いきなりの出来事に、戸惑いを感じてしまう。



「笑っちゃうよ。もう・・・」


「何が、書かれていたんですか?」


「警告する。お前は戦いから逃げようとしている。逃亡者は銃殺される」


「なんでBF!?」


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