第15話「気晴らしの外出」


ゴールデンウイークは、特にやることがなかった。


部活があるわけでもなく、もちろん学校もない。


朝に起きればゲームをし、夜には眠りにつく。


昼夜逆転だけはしないように心がけた。が、それでも昼間はずっとゲーム。


1日中ゲームをし続けると、もっと有意義な過ごし方があるのではないかと思ってしまう。


しかし、ゲーム以外特にやることがないので、結局ゲームをしてしまう。


そんな日々が続き、ゴールデンウイーク最終日。


その日はとても晴れた日で、雲一つない晴天だった。


それでいて、暑すぎない過ごしやすい気温。


気晴らしにはちょうどいいと思い、実に数日ぶりに外出してみることに。


川沿いの遊歩道を歩いていると、すれ違うのはランニングをする大人。河川岸には野球をする小学生。


片田舎のこの街だが、こうしてみると人は多い。


そんな中、ベンチに座る見覚えのある人がいた。


平林さんだ。それ以外に、男性数人も一緒にいた。


平林さんのお友達か何かだろうか。


そうは考えたが、自分には関係のないこと。


そのまま素通りしようと、遊歩道をまっすぐ歩く。


もう通り過ぎたと感じたその時。



「あ、友彦くーん!」



声をかけられてしまった。


土手の下から聴こえてくる彼女の声を、俺は無視したい気持ちでいっぱいだった。


しかし、常識的にかけられた声を無視するわけにもいかず・・・。



「あ、どうも・・・」



駆け寄る平林さんに、軽く会釈をする。



「助かったよ」



そんな意味ありげな言葉をかけられると同時に、なぜか俺の手を握りしめる。


困惑した俺を他所に、彼女は土手下の男性数人に対して。



「ごめんね。彼氏来たから」



そう言って、俺を引っ張るようにその場から立ち去る。


空気を読んで・・・というよりかは、困惑しての方が正しいと思うが、それからしばらくは、俺の方から話しかけることはなかった。


河川敷を抜け、住宅街の中にある公園にたどり着く。



「ごめんね。友彦くん」


「あ、いえ・・・というか、どうしたんですか? なにか、事情がありそうな感じでしたけど」



彼氏来たから・・・平林さんはそう言っていたが、無論、俺は彼女のボーイフレンドではない。



「あ、うん・・・ちょっとね」



あはは。苦笑して、誤魔化す。


言いたくない事情なのだろうか。


詮索するのもよくないと思い、それから彼女の家まで送って平林さんとは別れた。


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