第14話「観測は根気強く」


レジャーシートに寝転ぶ。静かな公園で、静かな空間。


会話もなく、でも気まずい雰囲気でもない。とても幻想的な空間。


時刻は深夜の0時を回ったところ。


それまでは天体望遠鏡で遊んでいたが、ここからは流星群の観測だそうだ。


ちなみに左隣で寝転ぶ岩船先生は、完全に眠りについていますね。


風邪をひくと大変なので、なぜか用意されていた薄いシーツのようなものを身体にかけておきました。


そして右隣には平林さん。川の字でみんなが寝転がっている。



「あの、これがセオリーなんですか?」


「流星って、いつ見れるか分からないからね。寝転んで待機するのが常套手段よ」



そうらしいです。


ちなみにお目当ての流星群は、みずがめ座η(エータ)流星群。


主に南半球で見れる流星だが、日本でも見れないことはないらしい。



「あの・・・訊いても良いですか?」


「なに?」



お互い星空を観ながら、前から気になっていたことを質問してみる。



「前に平林さんが、岩船先生に助けられたって言ってましたよね」


「そうだっけ?」


「はい。差支えなければ・・・でいいんですが」


「うーん・・・私の口からは話せないかな。佳奈美ちゃんに訊いてみたら?」


「先生に?」


「佳奈美ちゃんの判断に任せる」



平林さんは話したくないこと。それはつまり、他人に知られたくないことだろう。


それを、岩船先生の独断に任せる。


なんというか・・・。



「すごく信頼が厚いですね」


「佳奈美ちゃんは信頼できる人だと思うよ。普段はあんな感じだけど、頼りになるときはとことん頼りになるから」


「そうなんですか」



その夜、流れ星を観ることはできなかった。


輝く星々を眺めながら、たまに平林さんと何気ない会話をして終わった。


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