第12話「ようよう友彦くん」


日もすっかり暮れた、19時半。


一応ということで制服を身にまとい、学校近くの公園に向かう。


そこから10分ぐらいすると、車のクラクションの音がする。


そちらの方へ目を向けると、運転席に岩船先生の姿が・・・。



「乗りたまえ」


「あ、はい」



今日は部活の一環ということで、天体観測をすることになっている。


いまは車で観測する場所まで移動するところだ。



「ようよう友彦くん」



後部座席に乗り込むと、若い女性の声がする。


声の主は、平林綾香。大学生で19歳の卒業生。


彼女は後部座席の右側に座っていた。



「平林さんも来てたんですね。あ、隣失礼します」


「佳奈美ちゃんから誘われたんだ」



えへへと、嬉しそうな表情で口にする。


ちなみに佳奈美ちゃんとは、岩船先生のことを指す。



「岩船先生が・・・そうなんですか」


「ちょっとは気分転換になると思ってな」



と、これは岩船先生の発言。


平林さんにとって、この部活動はそれほど思い入れのあるものなのだろうか。



「ところで友彦くんは、なにがお目当てなの?」


「え、えっと・・・」



お目当てとは、おそらくどんな星を見るのかという問いだろう。


もちろん、そんなものは存在しない。


そもそも、なにが見えるのかもわからない。



「今日の放課後に、望遠鏡の話になったからな。軽く慣れるって意味の観測だ」



なにか適当な星でも言ってやろうかと思ったが、その前に岩船先生が擁護してくれました。



「そーなんだ」


「はい・・・」


「特にお目当てないなら、わたし流星群みてみたいな」


「流星群って、いわゆる流れ星ってやつですか?」


「そうそう」



それはちょっと観てみたいかも。


流れ星に願い事を・・・などと言うが、実際に流れ星を観たことはない。


願い事云々はさておき、純粋に観るだけでも興味が湧いてくる。



「この時期ってことは、みずがめ座η(エータ)流星群か?」


「さすが佳奈美ちゃん」


「そんなに遅くまでやるのか?」


「いいじゃん。明日休みなんだから」


「先生は仕事あるんだかなぁ」



平林さんと先生の会話には、ついていけそうで全然理解できない。つまりついていけない。


とりあえず流れ星云々と、結構遅い時間帯まで観測をすることになりそうってのは把握した。


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