第11話「一応ね?」
部活の活動日は、一応天文部っぽいことをする。
「この望遠鏡って、どのくらい遠くまで見えるんですか?」
部室の片隅に鎮座している天体望遠鏡。
遠くの星を見ることに特化した望遠鏡で、その倍率は双眼鏡などとは比べ物にならないほど・・・。
「ん? あぁ・・・どうだろうか」
「知らないんですか?」
「いやまぁ、どのくらいと言われてもねぇ・・・米粒程度でも見えるものを指すなら、数百光年先の恒星も見えるし」
「天体望遠鏡のスペックって、どういう観点から見ればいいのかよく分からなくて」
「一般的に、レンズの倍率と口径かな。あとはまぁ、便利機能」
「便利機能?」
「例えばこれなんかは」
そう言い、部室の片隅に置いてある天体望遠鏡を触る。
望遠鏡は三脚の上にあり、斜め上方向に傾いている。
その望遠鏡を、軽く触って動かす。
天体望遠鏡の挙動は、三脚にカメラを設置したときのような上下左右の動きではなかった。
斜め方向へ移動している。ぐるっと円を描くように動くのだ。
「えっと・・・」
「これは赤道儀と言ってな、観測する対象の天体を追尾しやすいように鏡筒を向けれるようになってるんだ」
「えっと、鏡筒って」
「これのことだ」
トントンと、軽くたたく。
そこには、天体望遠鏡の本体部分。白くもっとも長い筒状のことを鏡筒というらしい。
「そこが斜めに動くと、追尾しやすいんですか?」
「星ってのは、地球から見たとき北極星を中心として回転するからな。上下左右に動かれると追尾するのに調整が面倒なんだ。もちろん上下左右にしか動かない望遠鏡もあるぞ。経緯台タイプだな。こっちの方がいくぶん安い」
「では、ここにあるのは高いグレードなんですね」
「鏡筒の動かし方だけで見れば、高いグレードで間違ってはいない。あとは機械が自動追尾してくれるものもあるが・・・まぁここだけは桁が違う」
機械コントロールだから、手動のものに比べて値段が張るのは当然だろう。
「すごく素朴な疑問なんですけど、望遠鏡の鏡筒ってそんなに頻繁に動かすんですか?」
「どういう視点で見るかにもよる。例えば土星を観測するとき、全体を観測するか、輪っかや縞模様を詳しく観測するかで変わってくる。後者は望遠鏡の視野いっぱいまで近づけて観測するから、割と短時間で視野から外れてくる」
「天体って回ってますもんね」
「対象の天体もそうだが、地球も自転と公転をしているからなおさらだ」
「なるほど」
「興味が出たのなら、天体観測でもしてみるか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます