第9話「岩船先生の天文学講座(後編)」


「これを宇宙規模で考えるんだ。言い忘れていたが、回転する力ってのも慣性の法則のうちの一つだ」


「他からの力がない限りは・・・ってやつですか?」


「そうなるな。我々が住んでいる地球は、太陽の周りを公転している。太陽ってのは、地球の33万倍の質量があると言われている。それだけ重いんだ。だから、地球は太陽に引き寄せられる」


「引き寄せられるって、よく聞きますけど・・・どうしてなんですか?」


「そうだな・・・仕事もせずに自由奔放としていたとあるイングランド人は、地面に落ちていくリンゴをみて唐突に疑問を抱いたんだ。リンゴが地球にひかれるなら、リンゴも地球を引き返しているんじゃないかって。あとリンゴは落ちるのに、月が落ちないのはなぜか? ってのも有名だな」



とても有名な話ですね。普通にニュートンって言えばいいのに、どうしてこうも回りくどい言い方をするのだろうか。


そして、発想がぶっ飛びすぎてて何を言ってるんですか? って感じだ。



「そして、この物質間に存在するお互いを引きあう力を万有引力って名付けた。簡単に言えば、引き合う力。これは物質の質量が重ければ重いほど、距離が近ければ近いほど、力は大きくなる」


「引き寄せる力じゃないんですね」


「引き合う力だ。とはいえ、地球と太陽じゃ質量の差がある。太陽の持つ力の方が勝ってしまい、結果的に引き寄せられる」


「なるほど」


「引き寄せられた地球は、太陽に向かって落下し続ける。しかし、太陽ってのはどんな形をしている?」


「どんな形・・・丸・・・ですか?」


「その通りだ。だから、落下はしているのだが、丸いから完全に落っこちることはない」


「想像しにくいですね」


「上り坂と下り坂。同じ力でボールを投げたとき、飛距離が伸びるのはどっちだ?」


「下り坂ですね」


「そういうことだ」


「どういうことですか?」


「つまり、丸いってのは永遠に下り坂が続くものだと考えればいい」


「あぁ・・・なるほど」



これが、天体の周りを天体が公転しているメカニズム・・・らしい。


今まで岩船先生の授業を受けたことがなかったので、岩船先生が初めて先生らしく見えたような気がした。


ってことで・・・。



「わかったか?」


「大体は・・・」


「なら、今日の活動はそういうことでいいだろう」


「こういうので良いんですね」


「もちろん。天文学について知識を深めたってことだ。立派な活動内容だよ」


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