第5話「たった一人の部員」


次の日、俺は部活には行かなかった。


さっさと家に帰って、そしてゲームに没頭した。


その次の日も同様だった。


週末を挟んで月曜日も、火曜日も、俺はどこの部活にも足を運ばなかった。


そして水曜日。



「部活動の入部届は、今日中に顧問の先生に提出すること」



担任の先生がそう言う。


部活動の体験入部の期間も昨日までで、今日からは本入部をしなくてはならない。


この学校では、部活動は強制加入だ。


俺もどこかしらの部活に入らなくてはならないのだが、正直なはなし、入りたくはない。


とはいえルールはルールで、入らないと担任が口うるさく指導してきそうなので、重い足を引きずりながら部活動の活動場

所へ足を運ぶ。


一回職員室に行くことも考えたが、顧問の先生は恐らく活動場所にいるだろう。そう思っての行動だ。



「失礼します」



ドアを開ける。そうすると、一週間前に見た光景が広がる。



「きみか。今日来たということは」


「はい。入部届です」


「入るんだな」


「はい」



差し出した入部届を受け取ったのは、天文部顧問の岩船先生。


俺が入部したのは、天文部だ。



「部員は、増えなかったんですね」


「まぁこの通りだ。君が入部したことで、この部の存続が決定したな」



俺は体験入部期間初日に、この天文部を訪れた。


それ以降、全く顔を見せることはなかった。


この間に、もしかしたら入部希望者が現れていたかもしれない。


そう思いながらここに来てみたが、結果はドアを開けた瞬間に察した。


そこに広がっていたのは、一週間前に訪れた時と全く同じ。


狭い教室に、岩船先生が一人でいる光景。



「確かに受け取った。きみは今日から天文部の部員だな」


「はい」


「言っておくが、部活動も休めば欠席扱いだからな? サボるんじゃないぞ」


「あ、はい」



あわよくば幽霊部員になろうと画策していたが、どうやらそれは無理のようだ。


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