第2話「空虚な部活」
「他の部員とか、いないんですか?」
「いないぞ」
「い、いない?」
「去年度まで3人。全員卒業した」
「え、えっと、それ部活動として続けていけるんですか?」
「この学校は、既存の部活動で部員が一人でもいれば廃部になることはない」
今は部活動の体験期間。色んな部活動を試して回り、厳選する期間だ。
なので、部員が一人もいない天文部は、とりあえずで存在している感じなのだろう。
「部員が一人も来なかったら・・・」
「廃部だな」
「そうなんですか・・・」
そして、無言になる。
やることもないし、何をやれば正解なのかもわからない。
岩船先生は、なにも話さない。
それどころか、先生は本を読んでいる。
チラッと見た感じ、普通のノベル本だろうか。
それはどうでもいいが、とにかくやることがない。
なので、とりあえずで狭い教室をウロウロしてみる。
棚には地球儀や正座早見表、双眼鏡などが置かれている。
壁には太陽系や銀河系などが描かれた紙が貼られており、一部には誰かしらが撮った星空の写真まで飾られていた。
隅の方には天体望遠鏡まである。
部員が少なかったとはいえ、結構本格的だったのだと感じさせられる。
「興味深そうだな。村上は、天文に興味でも?」
うろちょろしていると、先生に声をかけられた。
「天文はほとんど分かりません。興味もないです」
「ほう」
「いや、興味はちょっとだけあります」
実際は興味なんて全くない。
しかし、ここは天文部で、俺はそこに体験入部という名目で来ている。
興味がないというのはおかしな話だろう。
「まぁ何がともあれ、もしよければ入部してほしい。部員は今のところ誰もいないけどな」
部活動強制参加のこの学校において、部員がいない部活動はまさに楽園のような空間。
人間関係が苦手な俺にとって、非常に都合がいい。
とはいえ、いまは体験入部の期間。入部するかどうかは、一週間後に決めることだ。
「考えておきます」
そう言ったところで、今まで静かだった教室に、ノックをする音が響く。
誰か来たのだろうか。もしかして、俺と同じで体験入部に来た人?
息を飲み、ドアの方に視線を向ける。
そして、ドアがゆっくりと開かれる。
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