第7話 日常、原動力。

「クソが」

裕斗は登校しながら暴言を吐く。

やっと春休みの課題を提出できたと思ったら、来週から学力テストが始まるのだ。

「・・・」

(1時間目サボろっかな)

通学路にある公園を見ながら逃げ道を探す。


裕斗は勉強が嫌いだ。

そのため授業も受けたくない。

1年生の時もよく授業をサボっており、単位はギリギリだった。

正直、彼は学校にも行きたくないらしい。

勉強や部活など、学校に行く理由は人それぞれだが、裕斗は学校に行く理由などない。

しかし、彼のように『理由のない理由』で学校に通う人もいるだろう。

「・・・はぁ~」

ついに通学路から外れるかと思われたが、裕斗は『仕方がない』と言わんばかりのため息をついて、登校を続けた。

どうやら、今の彼には学校に行く理由があるらしい。


*********************************************


「おっ、おはよう裕斗!」

「おはよう、謙ちゃん」

裕斗が隣に来ると、謙介(けんすけ)はすぐに挨拶をした。

「謙ちゃんて来るの早いよね」

「いや裕斗が遅いねん!」

始業まであと2分。周りの生徒もすでに着席している。

「・・・」

裕斗は学校に来るかどうかも迷っていたほどなので、むしろサボらずに来たことを褒めてほしい様子。

「…なんやねんその『崇めよ』顔は」

「?」

(なんでわかんだよ)

自分の考えを読まれて、裕斗は驚きつつも、少しうれしく感じた。

「来週テストじゃん。謙ちゃんは大丈夫なの?」

荷物の整理をしながら裕斗は尋ねる。

「もちろん!計画的に勉強してるよ!まあ俺まだ部活もやってへんし!」

(やっぱ意外と真面目なんだな)

彼らはまだまだお互いのことを知らない。

「じゃあ勉強教えてよ」

「いや、俺そこまで頭よおないし…」

「いや絶対俺よりいいじゃん」

「それは…そのようやな」

「そこは嘘でも謙遜しろよ、『謙』介だろ」

「それ今関係ないやろ!!」

裕斗が適当なことを言い、最終的には謙介が突っ込みを入れる。

2-2教室の真ん中で行われるこの流れが通常のものとなってきて、多くのクラスメイトはそれを見て笑っている。

(…まぁ、いっか)

そう思った途端、始業のチャイムが鳴った。


裕斗は勉強が嫌いだ。

学校にも、行かなくていいのであれば間違いなく行かない。

そんな彼は、別にやる気が出たわけではないが、やはり『仕方がない』という心持で、今日も授業に臨むのだろう。

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関西弁の男の子 鳳雛 @hosu-hinadori

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