第6話 関係、興味。

放課後の2-2教室には居残りで課題をする裕斗(ゆうと)、彼を待つ謙介(けんすけ)、そして突然現れた上級生の龍治(りゅうじ)。

謙介はまだ2人の関係を知らない。


「『帰って』って、一緒に帰りたいから迎えに来たんだろ~?」

龍治が裕斗にちょっかいをかける。

「やめろ。謙ちゃんと帰るっつてんじゃん」

裕斗はずっと龍治と目を合わせようとしない。

「思ったんだけどめっちゃ親しい呼び方してんね?『謙ちゃん』て。

そういやお前、俺のこと昔『龍くん』って呼んでたな!」

(昔?もしかして…)

謙介は2人の様子を見て察する。

「あだ名好きだな~お前。なあなっ、昔みたいに俺のことも―――」


「お前は誰だよ」


「「え」」

驚きのあまり、謙介は龍治と同じ反応をしてしまった。

裕斗はやはり龍治を見ずに続ける。

「俺の知ってる『龍くん』はもういない。お前は他人だよ」

「・・・」

教室に来てからずっと軽々しい口調でいた龍治はその言葉を聞いて、さすがにショックだったのか、裕斗から離れて黙り込んでしまった。

「わかったら帰って、龍治」

「…また来るわ。じゃあな裕斗。謙介も!」

龍治は、謙介にはせめて笑顔でいようと努めた。そして裕斗の言葉通り、教室を後にした。

(どうしちまったんだよ、ったく…)

そして、1人で玄関に向かいながら、豹変した幼馴染のことを想うしかなかった。


(えーっと…)

「・・・」

(いや気まず!)

以前、一緒にいると落ち着けるかもしれないと言った謙介は、その存在である左隣の人物を見ることができずにいる。

(結局なんやったん?!あの龍治くん!昔からの知り合い?でも『誰だよ』て、友達やあらへんの?!裕斗、いつもと変わらへん態度やと思ってたんやけど・・・あ、あだ名好きやってんな)

しかし、心の中では騒がしい。

「幼馴染だよ、今の」

「え?…あ、ああ」

(なんとなくそんな気ぃしてたけど…)

裕斗が沈黙を破り、謙介も安堵する。

「謙ちゃんにはいないの?そうゆうの」

「俺?俺はおらんかったよ!でも幼稚園入ってからは友達いっぱいできたわ!」

「っふ、謙ちゃん、友達多そうだもんな」

(あ、また…)

裕斗がまた笑い、空気は一気に和んだ。

「なに?」

「いや!なんにもないよ!」

謙介はつい裕斗の笑顔を見つめてしまった。

「ほらもう帰るで!」

「いやまだ宿題終わってねぇし」

そうしているうちに、龍治との関係や先ほどまでのやり取りが気にならなくなり、2人は再びいつもの放課後を過ごした。

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