33ページ,ステータス偽装
一仕事終わった後にキャルの家へと帰る。もう、自宅みたいになってきている。まだここにきて二日くらいしかたってなけど。
ドアを開けると、フェイさんが心配してキャルを抱きしめる。フェイさんは、
あの後、キャルはなんとか目を覚まし、事情を話した。
ガイラズはまだ目を開けておらず、失神している。
でも、これで支配からは逃れられたのだから元の性格であるガイラズに戻ることだろう。
ケーラはというと、スラムに置いてきた。欲を言うと、ボクらと一緒に行動をする仲間になってほしいんだけど、まだ早いと思って。
そして驚いたのが、スラムの事だ。スラムはだいぶ荒れに荒れきっていて、住めるような環境はない。スラムの住人にケーラの話をしたらアイツはここらで有名なやつで、喧嘩においてトップクラスの実力らしい。そして、親はいない。仲間をおらずいつも何処かへ行っていたらしい。ここ二日は特に忙しくなっていたらしいな。これも、後で確かめるか。
いずれかは、スラムのことも解決したいところである。
ちなみにケルはというと───
「ケル、おっきい!アタシも大きくなるよ?あっ、クーもおかえり!」
マーニャが手を振ってくれたのでこちらも振り返す。元気だなあ。
ケルは、邪王として、前のケルの肉体は無くなった。
帰りながらケルの話も聞いてみたが、凄く壮大だった。
ケルは、ベルゼブブの支配から逃れた
そして、ケルは元の邪王としての自分の恰好に戻る為、俺にお願いをした。
もちろん、これもオッケーしてやったさ。だって、私は優しいもんね~♪
その後はきちんとキャルが家から出て行ったタイミングでケルも元の世界に帰った。
そこに、キャルが来るのは想定外だったが。
なんでキャルがあそこに来れたんだ?いけるのなら『
キャルとケルは波長が似てるからな。その<法>だったら、なんとかなりそうだ。
試しに聞いてみるか。
「なあキャル、疲れているところ申し訳ないんだが、一つ聞いてもいいか?」
「うん、いいよ。なに?」
小首を傾げ笑顔で僕からくる質問を待つこの仕草。もしかしたら昔だったら惚れて───後ろからガルルッと
「えーっとな、キャルはどうしてケルの元の世界のところまで行けたんだ?そうとう至難の業じゃなきゃ、行けないはずだが」
「あーそれは簡単だよ、アメリって人がいて───アッその前にまずは
「そうか、わかった」
アメリ?ソイツが連れてってくれたのか。だとしたら相当怪しいな。さて、どうしたもんか。
もう一回、戦う準備だけはしとこう。だが、その前に───
「風呂に入るかー!」
「「「賛成ー!」」」
満場一致!おっけーだ。
その後、風呂場にはなにも事件が無く、騒がしいだけでした。
でも、今日が色々起こりすぎて、たった1日ぶりだけだというのに、何週間もたったかのような気持ちよさだ。ほんと、
明日からは、また事後のことで忙しくなる。だから、今のうちに休息だ!
そうだ、そうしよう!
風呂からあがると、ガイラズさんが、フェイさんに土下座してフェイさんがもの凄い形相で怒り上がってるという、なんというか、とにかく修羅場な激熱展開が待ち受けていた。
というより、フェイさんの顔がもう文字通り鬼の形相だ。あんなん、本物の鬼より鬼だぞ。
すぐさま、マーニャちゃんたちを部屋へ行かせる。
フェイさんにも落ち着いてもらって。
「ふう、まあ取り敢えず、キャルに手を出したのは許せないけど、事情を話してくれる?貴方の雰囲気も昔みたいになったし」
だいたいは察しているけど、詳しい状況はわかっていないという感じか。
当たり前だ。でも、普通ならなにも分からないはずだが、流石、フェイさんは察しがほんとに良くて恐ろしい。
だから、私はこれまであったことを簡潔に説明した。フェイさんは察しも良くて頭も良いからすぐに理解してくれた。
「うーん、なるほどね……そういうことなら、仕方な……くはないけど!でも、支配されてるときの記憶はまだ残ってるの?」
すると
「おおかた、憶えている。でも、俺を支配した奴や、俺が日々何処に行っていたのか、うまく思い出せないんだ。なにか命令はされたとは覚えてるんだけど……」
私は立ち上がり、ガイラズの魂を調べる。こういう記憶関連は、断面てきなことしか憶えていない頭よりも、より正確に、感情的に憶えている魂の方がわかりやすい。
〈鑑定の眼〉を使用し、ガイラズさんの魂を
さらに『
「どうやら、記憶が消されている」
「どういうこと?」
「多分、探らせないようにするためだろうね。魂は脳みたいな構造になっているんだけど、ガイラズさんの魂は一種の記憶障害のようになっている。いや、ちょうど、ガイラズさんが思い出せないというところだけ、魂が欠落してる。だから、思い出せようにも、思い出せない」
「魂が欠落してるって……それは俺は大丈夫なんか?」
「うん、全然平気。命に別状はない」
「っほ……」
ガイラズさんが安堵の溜息を零す。なんとか話し合いが終わろうとしていたその時。
「お父さん……」
「ッ!キャル……」
キャルが来た。ガイラズさんは正座したまま、キャルが歩み寄る。
二人の間は十分な距離となり、話し合う準備ができる。すると───
「すまんかった!」
ガイラズさんがそのまま土下座をして謝った。気迫はなく、弱弱しい恰好で。
それを見てキャルは平然と告げる。
「……私はね。……お父さん、私、不安だったの」
「……不安?」
ガイラズさんが疑問の表情を浮かばせ、その理由をキャルは淡々と言う。
「フレアが死んで。お父さんは私と一定の距離を保つようになった。周りから見ても、あまり軽薄そうには見えなかったと思う。だけど、私から見たら、関われない距離がそこにあった。それも、お父さんはわかってたよね?」
静かに、ガイラズさんの顔が下へ向く。ゆっくりと、正直にこたえるのが、贖罪のように。
「だけど、それも全部、私を【
感情の高ぶり。ガイラズはあの時の瞬間、キャルの感情を大いに震わせるためにあの行動を打った。ガイラズはそこについてよく知っていなかったがな。
「でもさ───」
キャルは慈愛の表情で許すかの如く、告げる。
「これで、お父さんを縛るものはなにもなくなったじゃん。お父さんを操る人も、使命も」
ガイラズさんは泣いて、言葉を聞いている。苦しかったのだ、操られているのがわかったことが。自分の娘を手にかけようとしていたことが。
「許すよ。私は。お父さん、だからまた昔のように───いや、昔以上に、接してくれる?」
「うっ……くっ……あっあああぁぁ……」
嗚咽が部屋に響く。当たり前だと言わんばかりに。キャルはガイラズさんに抱き着いた。
暫くした後、二人は落ち着き、さらに、キャルはその言葉を告げる。
「……でもさ、お父さん。ただ許すだけじゃあ不公平だよね」
「え?」
私たちは困惑の表情を浮かべる。フェイさんは察したようなのか、ニヤリと笑った。
「歯、食いしばってね」
その一言で……悟った。ガイラズさん、お疲れ様です。
見事、話あいの末、ガイラズさんは殴られるだけで済んだ。それだけでも本当に痛そうだった。腹の音、凄かったね。
この後、二日もガイラズさんに
「さあ、皆そろそろ寝るか」
今夜も天天堂ツイッチをプレイして存分に遊んだ。
でも、やっぱりマーニャちゃんはお眠のようだ。ほらまた目を擦ってる。
さっさと寝るよ?
***
───夜、借りの部屋───
マーニャちゃんを部屋に入らせて、ケル達も各々の部屋に戻った。
そういえば、向こうは戦闘中に〈鑑定〉してたな。でも、〈
もうちょっと相手が偽装する可能性も考えとかないとね。
「ステータス、オープン」
目の前に半透明の青い板に文字が刻まれている。なるほど、こう見えていたのか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
‣名前:クライシス 個体名:無 性別:女 年齢:11 種族:人間 Lv:26
‣攻撃力:62 ‣守備力:99 ‣力:62 ‣運:88 ‣知能:29 ‣法:92
‣総合:70
‣〈スキル〉
〈空間把握〉、〈特定〉、〈法操作〉、〈力操作〉
‣称号【冒険者】
‣装備
〈トアノレス〉
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
全く、普通気づくだろ、こんなふざけたステータス。
11歳の女の子がCランク冒険者の平均と同等って……そんな世界、魔物が全滅してるわ!
これだと、すぐに〈隠蔽〉がされているって気づかれる。
変えよ、変えよ。
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