32ページ,戦いの終幕
「な、なにか勘違いしているようだから言うが、別に俺たちはキャルになにか手を加えたのではなく、そこにいるケルが───」
ガイラズが、減らず口を叩く。正直、うるさいぞ。耳障りだ。
「【
その一言で分からせる。お前の悪事を。
「⁉な、なんでお前がそれを」
分かってなさそうなので、もういっちょ。
「ファストの血筋」
「ど、どうして……」
もう一度で折れるか?
「フレアのことについて」
「どうしてお前がそれを知っているううぅぅ!!!」
ガイラズはオレに向かって斧を振りかぶってくる。それをオレは素手で受け止めた。
「う、動かん……」
「任せてください!先輩!」
横からもケーラが来る。それをオレは眼光で怯ませた。
「な、なんで、体が……」
「簡単なことだ。オレとお前らじゃあ、力の差が違うということだ」
「そ、そんなことはないはずだ!〈鑑定〉では、そのような結果は……」
こいつ、鑑定してたらしいな。まあ知ってたが。
「そんな鑑定如きでオレの隠蔽を上回ると思ったか?」
「そ、そんな……」
オレは片手で斧を地面に埋め込ませ、ケーラを壁に追いやる。
「ガハッ!」「グッ!」
「ほら、こいよ、まだとっておきは残っているだろ?」
「ッチ!【覚醒】!」
キャルパパが
「ただ愚直に突っ込んでいるだけなら、無駄な足掻きだ」
キャルパパは斧を再び拾い上げ、俺に攻撃を入れる。
俺は拳を握りしめ、思いっきり斧を殴る。
勝ったのは斧ではなく俺の拳だった。そして、斧はピキピキと
「…………ば……馬鹿な……」
キャルパパは拳だけで斧を壊した俺を見て、絶句した。
「先輩!」
気が付くとケーラは剣を握りしめ、振りかざそうとしていた。
その剣を視てみると、銘は
強力な魔剣で、一発でも当たったらそこから腐食を始め、ボロボロに砕ける。
でも、そんな魔剣でも、当たらなければ意味がない。
覇気を纏った足で剣を蹴り飛ばす。バキッという鈍い音が鳴り、その武器もまた破壊される。
腐食をしたのは纏っていた覇気だけで、俺の肉体?にはなんの異常もない。
すぐさま、ケーラの頭を掴み、地面にめり込まさせる。
そしてこっそりと魔法を撃とうとしていたキャルパパの魔法陣も破棄させる。
「なっ……!」
「はい無駄~」
「……ッ」
コイツらは、一回、潰しといた方が良さそうだな。
でも、まずは話でもするか。
「読者が追い付いてもいなさそうだし、少し話をするか?」
「?読者?なにを言っている?」
「まあこちらが知っている情報が本当に合っているのか確かめよう」
先ずは一つ目と、綴り、言う。
「ファストの血筋についてだ。ファストの先祖は、吸血鬼だったという言い伝えがあるらしいな。そして、吸血姫が持つ特性が、【皇化】と呼ばれる進化」
あそこの部屋で見た内容を続ける。
「それは、代々、血筋として受け継がれるが、人と交わりをもつようになり、純粋な吸血鬼の力である【皇化】の効果も薄れてきた。そして、現在。
吸血鬼の姫である吸血姫。その先祖返りが、キャルだ。
「でも、器だったのはキャルではなく、フレアだった」
「……」
悔しそうに、思い出すようにガイラズは下を見る。
「その器が、【姫の器】と呼ばれるものだ」
器と呼ばれるものにも、種類がある。吸血姫が持つ器は、【姫の器】と呼ばれるものだ。
「姫の器は、気まぐれにどこか相応しい人物に憑き、血筋に捕らわれない器の中でも変な器だ。それでも、お前らは先祖返りであるキャルに器が持つと思った。お前らは、なにか血筋でないと【皇化】の効果が薄れてしまうのか?だから、フレアが邪魔で仕方がなかった。そのフレアが死んだ。いや、殺されたに近いか」
恨んでいたのだ。
「あの日、フレアには魔法がかけられていた。鑑定をしてみると『
まったく、こすい技だ。それほどフレアを殺したかったのか。
「見事、【姫の器】と【皇化】を手に入れたキャルは後は覚醒させるだけ。迷宮の皇として、覚醒させる。そう、迷宮姫として。あ、どうして迷宮なのかというと、吸血鬼はどうやらよく
なにを目的として迷宮攻略したてのかは知らんがな。
「そして、迷宮姫の覚醒条件、それは感情の高ぶりだ俺は見ていないが、キャルにとってなにかの感情が高ぶった時、迷宮姫として覚醒した。多分、一番やりやすいのは、怒りか悲しみくらいか?そして見事、お前はキャルを覚醒させた。後は、どこかに連れ去ろうとしてたな?一体、何処なんだろうな?なあ?ガイラズ、今俺が言ってたこと全部合ってるか?」
顔を覗き込み、どうなのかと尋ねる。ガイラズは震えだし、怯えた。
おいおい、そんな風だったらもう答えを言っているようなものじゃないか。
「そういえば、大丈夫か?ケル、キャル」
話をしている隙に、こっそりと二人を回復させておいた。キャルはまだ眠っているようだが、ケルはもう目を覚ましていた。
「ありがとー、なんとかいきてる~」
ほわーっとした空気を纏って安静にしていた。うん、あともう少しまで体は動かさない方が良さそうだな。
その間に、っと。
「『
魔法でガイラズを気絶させた。といっても正確に言えばある種の全身麻酔にかかったような感じだ。
〈念動力〉でケーラもこちらに引き寄せる。
二人を横たわれせ、トアノレスでゴム手袋を嵌める。手術をするように。
そう、まだ謎が残っている。なんで二人がこうなってしまったか、だ。
もともとこんな性格だったと言えばそう言えるかもしれない。でも、俺は心底そうとは思えない。
フェイさんも「お父さんは私と結婚して三年のころから研究に没頭し始めた」などと言うように。
そして、ケーラも魔剣を使っていた。それは何故か。ある仮説を立てればそれは矛盾なく説明できる。
それは操られている可能性だ。
だから───
「これから、人格解離手術を始める」
───手術をする。
前に、ケルを手術したとき、あのときはまだケルが心の底から操られておらず、理性を保っていたから簡単な方法の人格解離手術をした。でも今回は別だ。あまりにも理性が保たられておらずに魂から支配されていた。
といっても、まずは体が血まみれ傷だらけだから『
次に、『
今回は二人同時の手術だから大変だな。
心臓部に向かってどんどんと切り開いていき、見つける。
魂を。
……随分と輝いているが、すぐ横にもう一つの魂がある。その魂は、二人とも淀んでいて悲しそうな魂だった。まるで、怨念の塊のようなものだった。
こいつを取り除く。しかし、通常の魂とくっ付いているためか、この淀んでいる魂だけを破壊したとしても、通常の方の魂が破壊されてしまう。
用意周到だな。
ゆっくりと魂を離れさせるしかないか。いや、めんどい。そんな片手間必要なんて俺は嫌だ。
だったら、これしかないやろ。
「〈魂源破壊〉」
破壊させる魂の対象は、もちろんどちらも淀んでいる方。
しかし、どっちの魂も通常の魂が壊されていく。
だが、〈
そしたら、淀んでいる方の魂も再生してしまうのではないか、とも言われるかもしれないが、魂というのは通常1個しかない。そこに2個目があるとどうなるか。
もちろん、なにも変わらない。ただ、例外として再生のとき、特性が変わってしまう。
魂を再生させるとき、治るのは生まれたときにあった魂だけ。連続して〈
後天的に手に入れた魂はこういう性質が生まれる。
そういえば、依代を形成したけど、魂が破壊されたから意味なかったな。
こんなにも魂がくっついてるとは思わんやん。普通。
ただ───
「───終わったなー」
そう、なんとか一時的にではあるが、終わったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます