17ページ,"創造主"からの贈り物

 ───物語、世界創世期───


 それは、昔の事。世界創世期のことだ。


 そこに佇むのは、たった一人の『創造主』。


 音もなければ文字もない。


 色も光もそこにないのであるのは真っ暗な空間。否、空間でもない。


 時空間、全てがないため、そこは人には理解ができない領域なのだ。


 そして、創造主が居るのは次元。そこは虚次元と呼ばれる次元。虚数空間ともいわれるところ。


 創造主は、いつからここにいたのかは分からない。


 今さっき生まれたのか、それとも遠い昔に生まれたのか。本人ですら分からない。


 時間も無いのならそんなのも分かるはずもない。


 ただ一つ。創造主が分かっていたのは『なにか』を作る、という使命だけ。


 だが、その『なにか』というのがなんなのかは全く皆目見当もつかない。


 だから、創造主が行った方法は一つだけ。


 ───全てを作り上げる。


 総当たり戦。全て、思いつくもの全てを作り上げれば、いずれその『なにか』が分かるということだ。


 創造主は、虚次元を作ることはせず、まず次元を作った。ビッグバン。次元そのものを創造するエネルギーを作り上げた。


 さらに、料理をするように創造を始める。


 先ず、秩序法則を作り上げた。数多の秩序。これにより、音や光が生まれる。創造主にも、視界が晴れる。


 だが、これではなかった。


 次に神を作り上げた。初めての創造主以外の生き物だ。だが、どう足掻いても創造主には及ぶものなど作れなかった。自分は、作れなかった。


 そして、これでもなかった。


 あれでもない。これでもない。そうして創造している内に400年が経った。


 相も変わらず、大量に物を創っているが、未だに『なにか』がわからない。


 万物の物を創造しているというのに、未だに分からないのだ。


 一体、なんなのか見当もつかない。


 行き詰ってしまったそんなとき、ふと視界に移った自分の創った世界が気になった。


 気が付いてみれば、創造主は世界を7つ、創造していた。


 調べてみれば1つの世界に、何個かの<界>というものがあるということがわかった。


 下から順に言うと


<獄界>、<魔界>、<現界>、<天界>、<神界>


 個体差があるが、基本はこの5つの<界>で世界が形成されている。


 そして生き物は<界>ごとに生態が違う。


 なんともまあ面白いことなのだ、と創造主は思った。


 創造主は、一番最初に創った世界へ向かった。


 そして、そこを世界の中心とした。


 そこからは世界の管理者を作り、一つの世界に一人の管理者をいれ、世界を管理した。


 最近は、主に神などが世界を脅かす行為をするときに取り締まるや、なにか個人で偉業を為したときに伝える、などをしている。それを見て、創造主は面白い、とも感じた。


 こうして、創造主は、為すべきことをしたあとに、また虚次元へ行き、創造にいそしんだ。

 



「───待って」


「なんだよ。人が話しているときに」


 キャルメルが唐突に尋ねる。


「いや、なんだよじゃないよ! 全然、トアノレスの話になってないじゃん!」


 うーん。相変わらず騒がしいツッコミだな。


「いやいや、これからこれから」


「ホントに?」


 こちらに疑いの目をかけてくる。そんなに疑わなくていいのに。


 まあ少し嘘は混じっているから疑うのは仕方ない。


「ほんとだって。今から続き話すから」


「……わかったわ。じゃあ続き話して」


 どんだけ疑ってるんだか。


「はいはい」





 ───さらに世界を創造してから4000兆年の月日が経過した。


 創造主は、未だに『なにか』が分からなかった。


 だが、創造主も成長しない訳ではなかった。


 なんと、創造主が最初に居た虚次元に直接干渉して創造ができるようになった。これにより、虚次元にも世界を作ることも可能となった。だが、何故か法則がぐちゃぐちゃになってしまうことだった。


 さらに、世界を飛び回った。


 そして、創造主が世界を見回って思ったことは、生き物は実に愚かだということだ。


 争い、憎みあい、殺しあう。芸術などが微塵みじんも感じられない奴らだ。


 何度、滅ぼそうとしたか。


 否、もう何度も滅ぼした。そして何度も世界を創造した。


 だが、結果はいつまでも同じだった。神でも、人でも。もう、創造主は心のどこかで諦めていた。


 そこで、そんな創造主にとって衝撃的な事が虚次元世界で起こった。


 この虚次元世界は管理者が居ない為、創造主が管理している。


 その為、問題があるとき、創造主自らが向かう。


 そこで起きていたのは異様な光景だった。


 ただの人族一人が神族、しかも最高神10人を殴殺していたのだ。


 しかし、神は特殊なやりかたでないと殺せない。


 だから、生き返っては殺され、生き返ってはまた殺されを繰り返していた。


 しかも人族はなにかブツブツと独り言をはいていた。


 そこで人族は創造主の存在に気づき、話しかけてきた。


「お前が創造主か?」


 人族が、創造主に話しかける。


 それに、創造主は答える。


「お前に会いに来た」


 狂気な目をした少年を一生、創造主が忘れることなどなかっただろう。そんな目を彼はしていた。


 その後は、創造主はその人族の為に一つの装備を創った。


 至高の一品だ。しかし、彼は、悲しい運命を辿ってしまった。追い詰められた彼は<現界>にトアノレスを放り投げた。




「それが、この"トアノレス"に語り継がれている御伽噺おとぎばなしだ」


「───つまり、トアノレスっていうのは創造主が創った装備ってこと?」


「まあそんな感じだ。至高変形装備しこうへんけいそうび、〈至高変形装備トアノレス〉。それがこの正体だ」


「じゃあ、トアノレスって何処で拾ったの?」


「師匠がちょっと、な」


 曖昧に返事を返す。


「そう、貴重な話をありがとう。アンタがあんなにも長く話していたからのぼせちゃいそう。私は先に上がるわね。貴方もあがる?」


「いや、私はまだいい。先に、ケルたちを連れて上がってくれ」


「わかったわ。ケル~、マリア~! 上がるわよ~!」


「「はーい」」


 暫くすれば、皆上がり私一人になった。


「ちょっと、怪しまれちゃったかな~」


 溜息を吐き、暫し考える。


 4000兆回も転生しているのに、嘘は未だに慣れない。


 ファムにも何度も言われたのにな。


『パルちゃんは、もうちょっとポーカーフェイスを気を付けた方がいいよ~でもまあ、その内、精神崩壊して表情無くなるから無駄か!アハハ!』


 うるせえっ!お前は黙ってろっ!


 脳内に居る創造主を払って消す。


 先代創造主のくせに威厳なんかなく、笑いが取り得の馬鹿野郎だ。


 創造主が飽きたからって勝手にやめて俺に継がせるだなんてよ。


 ……俺はステータスを開き、その称号を視る


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ‣称号 【次代創造主】


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 管理者たちは大丈夫かな~


 でもまあアイツらはしぶといし、しっかりしてるから大丈夫か。


 今日、わかったことは、その場凌ぎの虚構はやめておこうということだな。


 こういうことも何度考えたことか……


 まあ今回で最後の転生だ。楽しんだもん勝ちというやつだな。


 明日は勇者と勝負か~毎日が濃すぎ。まじで。


 さて、じゃあ僕もそろそろ上がろうか。

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