11ページ,圧倒

 まずは間合いを見て、相手の技量ステータスを見るとするか。


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‣名前 無 ‣個体名 ■■■ Lv 50000000

‣種族 暴食三頭犬魔デーマケルベロス ‣性別 オス? 年齢 13歳?

‣職業 憑りつかれヒモ


‣〈スキル〉

・暴食 Lv7 ・悪魔配下召喚 Lv4 ・そう術 Lv6 ・瞬時再生 Lv8


‣称号 〈暴食の悪魔ベルゼブブのお気に入り〉

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 ふむ。やはり流石は大罪魔物クルフィーといったとこか。Lvも50000000いっている。天災といわれてもおかしくはないな。まあ、天使と同じレベルなんだし、納得はする。


 でも、気になったとこだけ目を通してみたが、これほどまでとはな。暴食の悪魔ベルゼブブ本体が本格的に操っていないとしても、ここまで向上するとは。恐ろしいものだな。


 でも、俺にとっては弱すぎる。これでは全然楽しめない。


 なにかアクシデントが起き、僕にとって不利になったら少しは楽しめるんだがな。


 しょうがない。今回は、余のステータスを下げるとするか。


 考えが付き、ステータスを弄る。


 昨日の夜に知ったことだが、どうやらステータスを弄ったら隠蔽などのことをしない限り、変更できるらしい。


 もっと早く知っていれば、あの冒険者登録のときだって楽にいってたのに。やっぱ最初は世界の法則を知っておかないとこんなことになるんだ。覚えないと、どんどん忘れる。


 まあいい。そのおかげでこんなにも早くに一匹目の大罪魔物クルフィーに会うことができたのだから。


 喜ぼう。運命的な出会いをしたのだから。


 我は刀を握りしめる。今の我のステータスはあのワンコロより貧弱だ。ざっと、100000倍くらいか?


 だが、純粋な技量はこちら側の方が上だ。


 私は一気にワンコロの懐まで入り込む。


「キャン?」


 随分と可愛らしい声で鳴くものだ。


 しかしそんな声で俺が同情すると思ったか?


 私はワンコロの腹の上めがけ刀を薙ぎ、ワンコロの腹は切り裂かれる。


 だが、ワンコロは悲鳴も上げずに腹は瞬時に回復する。


 まあここまでは予想通りだ。


 ワンコロの腹は柔らかい。スキルの事がある為、相手が自信を痛めるときは避けずにわざと、くらうだろう。そして自分への攻撃がきかないと悟った相手は必ずといっていいほどに怯むであろう。そこをすかさず攻撃───


 ───とでも思ってるのか?


 私は振り下ろされた爪を刀でリズムゲームのように軽快に弾き返す。


 ワンコロは何故弾き返せた? と疑問の顔を浮かべている。


「どうやらお主は貧弱な者達としか戦っていなかったようだな」


 全く、それだけじゃあ達人には通用せんぞ。


 一旦、刀を鞘に納める。


「それに───」


 我は地面と別れ、一瞬にしてワンコロの頭上へと行く。


「───強者相手に油断は命取りだ」


 目を見開き空中に居たまま刀を抜く。


 俗にいう、居合切りだ。


 ワンコロの一つの首に刀の刃が届くその刹那。


「ギャアアアアアアアアアア‼‼‼‼」


 ワンコロが咆哮する。この技は、声量に魔力をこもらせ、放つ咆哮。


 普通なら<エーテル>をこもらせる方法はじゅ導率が低く、使い勝手が悪いのだが、コイツの場合は魔力が桁違いに多いのでゴリ押しでバカデカい<エーテル>をこもらせ放つ為、俺だけではなく、樹海全体が怯むような膨大な技になる。


 何かとコイツは相手を怯ますことが大好きなようだな。


 でも、確かに頭はいい。我が空中にいるときに怯ませ、なにもできなくさせるとは。


 偶然の賜物かもしれんが。


「しかし、怯ませただけじゃあ我は倒せんぞ?」


 ワンコロが我の腹部に爪を突き刺す。


「クライシス!!!!!!」


 キャルメルが余を心配し、叫ぶ。まあそんなのも無駄なことなのだがな。


「ガッ……! ……ガ?」


 結果的に述べさせてもらうと、我の腹部が貫くこともなく、逆にワンコロの方の爪が砕けた。


「まず相手の防御力を確認することだな」


 これほどまでに攻撃をするところが分かっていれば、そこだけに<エーテル>を使えば、少ない<エーテル>量でも十分な防御をしてくれる。


 視線を逸らすと、キャルメルが遠くのほうで安堵の溜息をもらしていた。


 そして我を縛っていた怯みは何処かへ消えていた為にワンコロの頭を一閃する。


「グルアアアアアアアアアア!!!!!!」


 今度は咆哮なのではなく、悲しい悲痛な叫び。


「先ずは一つ目」


 コイツの弱点は頭だ。


 なぜ、そんなことがわかったのかというと、さっきの腹部を切ったときに奴の血液を少々調べたためだ。


 血というのはなかなかに便利だ。コイツの弱点、生態、その他もろもろ一発で分かる。


 そして、コイツの血を見て分かった弱点は、ある決められた切り方、切る場所。それが全て合致していれば、再生もできずに切れるということだ。


 スキルも、では、ただの未完成な法則に過ぎない。


 この相手の再生をこちらが生かす。そしたら、あの技がぴったりだ。


「───玄海げんかい零細流れいさいりゅう刀剣術、〈伍〉《媒介ばいかい》」


 地面に着地するその刹那、余は刀剣術を開始。


 ワンコロの正面から一気に高速の速さでワンコロの尾の場所まで移動する。


 この技は一瞬にして相手を擦り傷程度に切る技だ。最初にする小手調べのときに便利だ。


 しかしこの場合は全くの別の意味をもつものになる。


 どうやらこのワンコロは回復するとき、体全体が動かなくなるみたいだ。先程もそうだった。それに、鑑定で分かっていたことだしな。


 どんなに小さい傷も。


 我はそこを待っていた。まずワンコロの尾をぶった切り、また高速の速さでワンコロの正面に来る。


 まだワンコロは止まったままだ。回復してるからな。


 次はワンコロの喉仏を突き刺す。叫び声を鳴かせる余裕はさせない。


 と思ったが、反対の方の頭が叫ぶ。


 耳鳴りが酷い。もっと楽しみたいが、さっさと終わらせないと我の体がもたん。


「───玄海零細流刀剣術、〈参〉《細切さいせつ》」


 ワンコロの頭を粉々に切る。


「二つ目、あと一つだワンコロだ」


 グルル……と唸るワンコロ。綺麗に真ん中だけ残してやったのに、随分と不機嫌な者だ。


 全く、やめろよ。そんな苦痛の顔を見せられたら……ゾクゾクするじゃないか///


 我はそんな興奮の顔をワンコロに向けたら何故かワンコロは絶句している。


 まあ、冗談だけど。


 そんなに余の顔が嫌いだったか? 凄く傷つくな。


 なんかイラつく。もう一つも潰してやろう。


 刀を構える。だが、このまま刀で切ってもつまんなそうだ。それなら聖法を使った方が面白そうだ。


 刀をだらんとし、呆けているキャルメルの方へ転移する。


「うわ⁉」

 

 私が突然、現れたためか後ろに飛びのくキャルメル。


「ここからはあのワンコロを使って授業の時間だ」


「急に表れて何言ってるの⁉ あんな奴で授業⁉ 確かに圧倒してると思うけど馬鹿言ってるの⁉」


 ほんとに五月蠅いやつだな。


「まあ慌てるな。それに、今日の授業は聖法についてだ」


「勝手に始まったし……聖法? 聖法なら十分できるわよ?」


 これだから素人は。


「なによ。その溜息は」


「いや、なんでもない。それより授業を始めるか」


 迫りくる爪を手刀で素知らぬ顔に弾き返す。


「これも聖法の技術だ。今のは『魔反射纏手刀ガラドウ・メタム』という聖法だ。やってみろ」


「いきなり⁉」


 僕はワンコロの爪を片手で弾きながら、もう一方の手で術式を描く。


「これが『魔反射纏手刀ガラドウ・メタム』の術式だ。見様見真似でいいからやってみろ」


 私、聖法苦手なのに……と言いつつも術式を描くキャルメル。


 さっき十分にできると述べたくせに。


 にしても随分と綺麗な術式だ。まだまだ未熟なのだがな。これは育てれば光るぞ。


 十分に技量が把握できたため俺は、「もう、いいぞ」といいキャルメルが描いた術式を一旦破棄する。


「皆、勘違いしてるようだがな。聖法というのは別に防御に特化した技ではない」


 つらつらと語る。


 別に元は防御特化型ではなく、万能型だ。だが、聖法というのは制御やら術式構築などで、とにかく難しい。


 だから個人個人の聖法技術が乏しい人間は聖法の攻撃は、ほぼしない。


 まあ方法が知らないだけだが。


「手本を見せてやる」


 術式を描く準備をする。


「今から俺が放つ聖法は見たことがない難題聖法だろう。だが、これが今、一番効果的な技だ」


 風が余の描く術式へ吸い取られるように渦巻く。


 スキル〈静止の魔眼〉を発動させワンコロの動きを止まらせる。


「グルッ」


「刮目せよ」


 風が一瞬にして止まる。


 術式が描き終わった。


「クー……それって……」


「さあこれが本当の聖法攻撃ザリエントだ」


 なるべく、樹海が壊れないようにしよう。

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