10ページ,大罪魔物孵化
───同時刻、テンラルト樹海、???───
樹海の中へ歩く男女二人。
一人は、黒色のローブをした怪しい男
もう一人は惹きつけられる蒼のローブの女の子。
二人は、王国へ向け樹海に溶け込んでいく。
男は、ここには何も無いことに苛立ち、力一杯地面を蹴りながら歩く。
「っち! 暇だ。なんの進歩もない! まだ王国にはつかんのか!」
どうやら多動的の類らしい。殺風景の所はお気に召さらない。
「まだ全然。あと、このまま直進して2時間。それにまだ1時間しか歩いてない」
「っち」
再度、舌打ちをする。なにもぶつける者が無いため、気持ちはどんどんとイラつく。。
「そういえば、ワイバーンを狩った者は見つかったのか?」
気を紛らわすため、彼女に言葉を投げかける。
「まだ。でもどうやらワイバーンを倒した者は一発、脳天を殴った。それだけしか傷跡がない。もし、会ってみたら戦ってみたい」
ほんの少し残虐な笑みをし、目は殺意に染まった顔をしている。腰には異国の剣である刀を鞘に納めている。
「まあそう興奮するな。我らの聖法はこの星で
「それもそうだ───」
返事を答えようとしたその刹那、なにかを見つけたように、彼女は鞘を押さえ、構える。
なにが起こったのか全く理解ができない男は彼女に質問を問う。
「なんだ?どうかしたか?」
殺気を殺し気配を悟られぬよう、彼女は答える。
「物凄い<
額から汗が一筋。
だがそれを男が手で制する。
「なんの真似?」
敵を見つけたのなら主人であろうと、威嚇をする。それが彼女の成り立ちであり、筋だ。
「まあ、お前が言っている奴は、私には見えんが……どうもお前より強いのではないのか?」
不敵に笑う男。樹海の木々による影があることから、なんとも不気味な笑顔になっている。
木々の
そして、男の返答には無言で
「じゃあここで卵を試してみないか?」
彼女は微妙に不機嫌な顔をするが自分が死んだら元も子もないので刀をチンッと音をだし鞘に納まる。
「
「いや、考えてみたが……流石にあれはここで放つのは危険すぎる。代わりに、少し弱めだが……十分にやばい奴をもってきた」
男はスッと『空間聖・魔級聖法』『
「ここへ魔力を流せばこの卵は孵化する」
卵が孵化したときの想像し、ニタニタとする。正直、吐き気を催すぐらい気持ちが悪い。
そんな男に心底どうでもいい顔をしている彼女は明後日の方向───否、すぐそこまでいる者達を見据えていた。
「孵化するなら早く。私が我慢できない」
彼女の右手が今か今かと痙攣し、左手でそれを
「慌てるな。すぐにやる」
男は、生まれつき微小しかない魔力を卵へ流し込み、一気に卵を成長させる。
最初はティッシュボックスぐらいの大きさしかなかった卵はグングンと大きくなり、やがて男では掴めず、力なく地面へ落とす。
男は卵を見ることなく、踵を返す。そして卵を見て呆けている彼女に言葉を向ける。
「帰るぞ。コイツのそばに居たら危険だ。だから今日はここまでだ」
彼女も男へ向かってトコトコと付いてゆく。
二人はまた、樹海へ溶け込んでいき、やがて見えなくなった。
***
───同時刻、同場所、ラーゼ・クライシス?───
俺はつい先程まで居た男女二人をある〈スキル〉による
どうやら、なにかを孵化させたみたいだな。僕の力眼もそこまで精度はよくないものにしている。だから、一体なにを孵化させたのかはよく分からないが、それもここで分かるか。
ちょうどキャルメルが足をとめ、上を見た。
「クライシス……もしかしてこれって……」
「ああ。卵だな」
つい先程の男女が孵化させようとした卵ですね。なんか言い方に語弊が生まれそうな気がするが大丈夫だろう。うん、大丈夫。
「ねえ……なんの卵……?」
グングンと卵は大きくなり、それは3メートルの大きさになった時、ピタッと成長が止まった。
まるでモン〇ターボールでポケモンを捕まえる時みたいにグワングワンと一番、下面を中心に回り、それもやがてピタッと止まった。
卵に亀裂が走り───割れた。
中から変な液体がドロッと出てくのは驚きだが一番驚くところが───
「巨大な……犬……?」
キャルメルが幼稚な可愛らしい表現をするが、それは間違いだ。もっと禍々しく……危険なものだ。
「いや……これは……」
鋭く生えた犬歯、紫色に禍々しくしている体毛、特段と赤く巨大に
「最上級突然変異個体、七つの大罪が一柱、【暴食】の大罪を冠する悪魔に憑りつかれた魔獣……
「……ガ?」
なんともまあ、間抜けな声を出す獣だ。涎を垂らし……操られている。元は……人。おそらく、この世界のものじゃない……。
この我らがいる世界……<
そこには、人族は住んでおらず、魔族が住み着いている。だが、我らが空にある、天族が住み着いてる<
そこでは魔族の王、『魔王』が昇格した生き物───悪魔という精神生物が盛り沢山にいる。その中でもトップクラスの実力を持つ七人の悪魔。そいつらは、一人一人が一つの大罪をその魂に刻まれている。そのため、その七人が付いた名は───〈七つの大罪〉
さらに〈七つの大罪〉の悪魔の七人は<現界>へ行き、自分が気に入った
まあ悪魔が気に入った証だ。代償があるのは至極当然のこと。
そして個体でも悪魔との順応性がある。悪魔との順応性が高ければ高いほど力が凄くなり脳の低下が早くなる。
どうやらこの犬は、悪魔との順応性が高いようだな。漏れ出る覇気が物凄い。
さて、俺が説明してる間に口をあんぐりと開けて、気絶しているキャルメルさんを揺さぶり意識を覚醒させる。
「ッハ!」
どうやら起きたようだ。というより起きるときハッ! って言うか? 普通。
「結構これやばいぞ。まだ馬鹿だから攻撃してこないが、もうそろそろ───」
「ガッ!!!!!!」
犬が赤黒く光る爪を上から下へ、ほぼ重力に任せた振り下ろしをする。
ズドオオン!と凄まじい音が樹海へ流れ込む。
愚直で単調な避けやすい振りおろし。
それでも、戦いには十分な力だ。キャルメルは動けそうにないので移動速度上昇のバフを掛ける。どうやら動けたようだ。しかし、振り下ろされた爪の残影である魔力は、通常避けられるものではない。
僕の方に
俺は覇気には覇気を、という具合で魔力と同じぐらいの力の覇気を飛ばす。
飛ばされた衝動と覇気は見事に釣り合い、発散された。
「やっぱりな」
俺は先程僕らがいた大地を見る。刃が振るわれたように、ものの見事、割れている。真っ二つに。
恐ろしいほどの攻撃力だ。流石、
「こんなの逃げた方がいいよ! さっきの
「まあそうだな。さっきはBだったが、こいつはSよりのAだ。桁が違う」
ざっと細かくいうなら、さっきはA-こっちはA+といった具合か。もはや星全体が協力して倒さないといけないレベルだ。どっちかというと、もう人類では勝てないレベルに到達しようとしている。
とても危険だな。
「だが───」
俺は心の中で〈トアノレス〉〚複製〛〚刀
ふう、と一息吐くと辺りは、空気が凍り付き重たくなる。目はぎらつき、
「こんな久しい戦闘なんて楽しみで仕方あるまい!」
いつもは一発で終わらせるが、
「まって正気の沙汰じゃないよ!?」
「お主はそこらで傍観していろ。我はちと楽しんでくる」
さあ! 十分に楽しもうじゃないか! イヌコロ!
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