第37話



 サエは何んだか、不思議な思いをしている。

自分の部屋で静かに珈琲を飲んでいる。

カーテンは開け放している。

レースのカーテンだけが風のない部屋で窓辺にぶら下がっている。


 ゆっくりと流れていく自分の部屋での時間。珈琲の香りが優しい。


 何か見張られているような感覚、いまだに違和感が残る不思議な出来事であった。

隣の部屋に住む少女が襲われた。

売れないアイドルを追いかけていたストーカーの仕業だそうだ。

警察から報告があった。

ストーカーが撮っていた何百枚もの写真の中にサエの写真も少なからず含まれていたそうだ。


 隣に住んでいた少女は既に引っ越しをして、部屋は空き家になっている。


 ただ、あの感覚は隣のアイドルを狙っていたついでにサエも覗かれていた、そんなようには思えないでいる。

どちらかと言えばサエを覗き見していたついでに、たまたま隣に住んでいたアイドルの少女の方が魅力的だったので乗り換えた? それも何んとはなく違うような気もする。


 隣の少女が襲われたこと、警察に自分の写真が少なからずも盗撮されていたと報告を受けた事、これらに関連性を感じられないでいる。


 ことの終わり、それは、お前はもう必要ではなくなった、これ以上考えるな。その報告を突き付けられたような気分を拭い去れない。


 隣の部屋では、先程から物音がしている。

新しい移住者が部屋の見学にでもきたのであろうか。

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