第36話



 不気味なほどに何もない日が続いている。


 静かだ、静か過ぎるくらいに静かだ、コミネはそう思う。


 ハナダは出張とやらで研究所には居ない。

何処へ、どんな用事で出張しているのかはコミネには分からない。

そう、知らない方が良いのだ。


 モトキは、相も変わらず P3 room で実験をしている。

最近では room にこもりっぱなしの日々が多くなってきた。

P3 room の奥の部屋が完成したからだろうか? 死の直前にタケダが言っていたことを思い出す。


「あの部屋は何のために作られているのか見当もつかない」


 まさか、とコミネは思う。まさか、タケダはそれをさぐっていたのではないか。

馬鹿な考えだとも思う。

外部に漏れてはいけないマッド・サイエンス。

その一部でも知った者は消される。

真剣に考えるような物語では無い。

コミネは頭を振る。

馬鹿馬鹿しい、と。


 然し、ひき逃げ、生死を彷徨うような重傷、本来なら即死だったかもしれない、彷徨い続けた挙句の死、犯人はまだ捕まってはいない。

やっぱりどうかしている、考えすぎだ、コミネは自分自身に、いい加減にしろよ、と言い聞かせるように再度、頭を振る。


 免疫学チームの面々は、いつものように働いている。

他のチームもあれやこれやとなすべき実験を進めている。


 時々、笑い声や、討論している声が聞こえてくるが、空虚に思える。


 今日も静かな日だ、コミネは思う。


 明日も静かな1日になるだろう、と。

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