第27話



 「これは面白い」


コミネは早々に声を出して呟く。


 こんなことあり得るのか。生物学は永遠の進化だな、コミネは思う。


 新しい脈管が見つかっただと。血管、リンパ管、それ以外だと神経繊維もある意味、管、と言えるか。


 その記事によると、皮下の繊維層に電子顕微鏡レベルの管を発見したという。今まで光学顕微鏡レベルで見つかった毛細血管やリンパ管、生命を育むにはそれで充分だと思われてきた。その為か、電子顕微鏡を駆使して新しい管を見つけようなんて誰も思わなかった。そういうことなのであろう、とコミネはひとりで合点する。


 更に論文を読み進める。


 新しい管は、何を運んでいるのかは未だ分からない。ただ存在が分かっただけである。皮下の繊維層に存在するその管は、皮下の膠原繊維層を縫うように走行している。そして、末梢神経に寄り添うように小さく蛇行しながら走っている。


 一体何のための管なのであろう、とコミネは一瞬の間、論文を読む事を止めて思考する。


 答えは? そうか、未だ何を運んでいるかは分からないと書いてあったな。考察の欄を読んでみる。


 神経繊維に寄り添うように走っているということは、神経に何らかの影響を及ぼしているのではないかと考えられる。と彼ら研究チームは言っている。


 なるほど、当然といえば当然の予測だろう、と思う。


 更に論文の考察欄を読み進める。


 今まで、気功や鍼、指圧やお灸、そう言ったものが東洋医療では気の流れなどで説明されてきた。然しながらも、目に見えず、測定できないものとして西洋医学では、信じられてこなかった。

我々は、この脈管を調べる事によって、気、という身体を流れるものが何であるかを証明できるかもしれない。そして東洋医学の効果を科学的に証明する事ができるであろう。


 なるほど、興味深いな。で、参考文献は? そう思い最後のページを見てみる。Refernces を見ると、無い。参考文献は一冊も無い。流石に斬新な発表だけあって参考文献は一切無しだ。


 そこへ免疫学研究チームのタケダが研究員室にノックをして入ってくる。


 「そろそろ読み終わられた頃だと思いましてね」


 冷たい缶珈琲を2本持っている。

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