第20話



 コミネとオオサワの妻トキコは後片付けを始め出す。


 その横で、少し離れた場所で娘のケイが小さな犬と遊んでいる。後片付けの邪魔をしないようにと、誰にも言われることもなく。教育が行き届いている?誰の?オオサワではないと思う。母親、確かにそうだとコミネは独り合点する。


「先生どうぞ」


とトキコが缶ビールを差し出す。


「いえいえ、御心配には及びませんよ」


「どうぞご遠慮なく、主人達は今頃大騒ぎでしょうから」


「そうでしょうね、ならば私も一本いただきましょうか」


「作業しながらでは落ち着いて飲めませんでしょうけど、足りなければまだ有りますの。作業が終わればほんの少しだけ二人で乾杯しませんか」


「ええ、ほんの少しだけね」


そう言いながら二人は作業を始める。


 冷えたビールが太陽の熱でぬくもり始めた頃に、作業が終わり、トキコが冷えたビールを差し出す。


「私もいただきましょうかしら、さっきのワインが余っていますの」


はて?オオサワの妻は、こんなに飲めたかな?とコミネは思う。


「先生、不思議そうなお顔をしていらっしゃいますね?私、結構飲めるのですよ」


「あはは、そうでしたか。あまり見かけないお姿でしたので」


「主人の前では控えておりますの。私がお酒を飲んでいる姿をあまり見たくないようで」


「ご主人がいない時には飲んだりなさるのですか」


「そうですね、時々・・・。でもないかな。最近は毎晩でしょうか・・・。でも主人にバレないように、酔ったりなんかはしませんのよ」

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