第19話

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 一同揃ったところで、再び乾杯となる。


「オオサワ先生のこれからのご活躍を願って」


医療機器メーカーの重役の一人が言う。


一同は、缶ビールを高く上げる。オオサワは相変わらず、にやけた顔である。


医療機器メーカーの重役の二人。


何処の企業なのか相変わらず分からない、コミネにはどうでも良い事。


 然し、ふと思い出す。この企業の重役の一人がオオサワには辟易していると研究所の誰かが言っていた。その強引なやり方に、個人的にはもう付いていけないと思っているらしい。成程、オオサワの人格について分かりだしたと言うところか。連れてこられた若い社員は?そうだ、昨年も来ていた。名前は?やはり思い出せないが、彼のことも別の研究グループから聞いたことがある。便利屋としてオオサワに使われている。噂だ、そう言う噂がたっても有り得ないとは思えない。


 ハナダは?静かにしていると思っていたら、オオサワの言葉に大仰に頷いて傾聴している。彼らしい、とコミネは思う。


 意外なのはモトキまでが同じようにして頷いている。そうか、とコミネは思う。先程の二人での会話。若いモトキは、オオサワに牛耳られている?そうかもしれない。


 厄介なことになりそうだ。自分には関係ないが、とばっちりは御免蒙ごめんこうむる。


 全員が2次会へ行くらしい。コミネは辞退して、オオサワの妻と共に後片付けすることを買って出た。

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