第17話



 したたかに酔っているようである。


モトキは笑顔で言う、


「先生、面白そうなお話をしているようですね」


「そんな事はないですよ、ちょっとした世間話です」


「いいえ、そんな事ありませんわ。コミネ先生は、医学の研究も、他の世界の研究もよくご存知で、とても興味深いお話をしてくださいますわ」


「ちょっとした雑学でしかありませんよ」


「へえー、そうなのですか。私も聴講させて頂きたいですね」


モトキが言うと


「先生には退屈なお話でしかありませんよ」


とコミネが答える。


そこへつまらなさそうな顔をしてオオサワの娘ケイがトキコのスカートを引っ張る。


「お母さん・・・。」


「はいはい、ごめんね。オレンジジュースでも飲みましょう。それでは先生方、私はちょっと失礼いたしますね」


トキコは娘のケイの小さな手を優しく包んで、クーラーボックスの方へ歩いて行った。

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