第16話



「自己統制システム、って本人は言っていたそうです。地球には自らが存続させる能力がある、と言ってしまえば分かりやすいかもしれません」


 オオサワの妻トキコは、興味深げに目を輝かせている。


「地球の表面が末梢神経である、というのは先ず感覚神経が地表に張り巡らせている、と考えられます。地球表面で起こっている出来事が地球内部に知らされるのですよ。生き物達全ての情報です。海も、そこに住む海棲生物も。地上では草木が生い茂り、それを生きる糧にしている生物が居て、その生物を糧にしている生物もいる。そんな生命の存在が情報として末梢神経から中枢神経に送られる。それが地上からの情報ですね。集まった情報で中枢神経は自然を調整する、それが自然現象であり、地球の自己統制システムである、って言う感じでしょうか。雨が降り、川が流れ、海へと注がれる。そして風は常に何かを運んでいる、時にはそれが病原菌であったり、そして時にはそれが自然災害として現れることもありますけどね。これがガイヤ理論ですね。勿論、私なりの理解でしかありませんけど」


オオサワの妻は、キョトンとしている。


「簡単すぎましたか」


「いいえ、簡単明瞭でよかったですわ。自然災害まで地球の自己統制システムなのですね。災害に会われた人達を思うと納得いかないところもありますけど、病原菌も風が運ぶのですね?」


「済みません、専門外の雑学的な知識なのでこれくらいしかお話しできませが、ある人の、そう、学者さんだったと思いますけど、その人が言うには、増えすぎた生物を統制する、って言うところらしいですね。ただ、現在の科学力ではそれを人為的にできるのも事実ですが。済みません、本当にこれくらいしかお話しできないのですよ」


「本当に分かりやすかったのですよ」


「ありがとうございます」


「他にもお話が聞きたいですわ」


そこへ缶ビールを片手にモトキがやって来た。

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