第15話



 コミネとオオサワの妻は食事を楽しみながら会話をしている。時々、子供の相手をしながら。会話は、世間話から料理の話に変わっていく。二人とも料理好きで、あれやこれやと互いにアドバイスやエールを送る。そんな時、オオサワの妻トキコが話を変える。


「コミネ先生が言っていた、あの時の不思議な理論ですけど」


「ああ、ガイヤ理論ですね」


「確か、ジェームス・ラブロック、でしたわよね」


「そうそう。NASAの宇宙飛行士です」


「また、お話してくれません? 先生のご専門の神経病理学で」


「あははは、地球の中心に中枢神経があって地上表面が末梢神経っていう話ですね」


「あのお話好きですの。まるで地球が生きているみたいで」


「確かに、ラブロックの打ち出した理論は面白いですね」


「そのお話は科学の分野では信じられているのでしょうか」


「ええ、未だ賛否両論なところはあるのですが、ネイチャー誌に載ってからは信じる人が多くなりましたね。ただ、スピリチュアルな世界で、がほとんどですね。科学者たちは相手にしていない人が多いですね」


「まぁ、ネイチャー誌に載ったのにですか」


「はははは」


コミネは大きな笑い声を立てる。その姿を訝しげに見ているオオサワには気づいていない。そして続ける。


「そうですね、オオサワ先生のようにネイチャー・メディスン誌に何回も論文が載った人から見たらとんでもないように思われるでしょうね」


「私、そんな意味で言ったのではございませんのよ。それよりも、私は信じたい、っていう意味で言ったのですよ」


「いえいえ、済みません、もちろん分かっていますとも」


「では、そのお話、もう一度聞かせてくださいますわね」


「勿論ですとも」


「以前からの続きとかじゃなくて、最初からですわよ」


「ええ、ええ、喜んで」

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