第11話
ハナダはコミネを横目で睨む。それに対して気付かぬふりをしながらコミネはハナダに声を掛ける。
「先生、先生も一杯いかがですか」
「コミネ先生、実験はもう終わったのですか」
「ええ、今日も終わって、時間は明日になっています。晩御飯でも食べて、ソファーで寝ますよ」
「そうですか、でもビールなんか飲んでる暇があるなら他に何かできることもあるのではないですか」
「そう、あるかもしれませんね。でも、今日は終わりにします」
「コミネ先生は、ここへ研究をしに来られているのですよね」
「それを言われると辛いですね」
「先生には、夢とかないのですか」
「夢ですか? 無いですよ。今を淡々と生きる。夢は、思いを持った時から戦いが始まる。私には合わないように思えるのです」
ハナダは首を横に振りながら、研究ノートを書棚から取り出し、研究員室を出ていく。
コミネは、温まった豆腐を口に入れ、一本目の缶ビールを飲み干すと、冷蔵庫を開けて二本目を取り出す。今夜は、三本飲もうか・・・、などと独り言を呟く。
若い頃は確かに夢を持って、この世界に飛び込んだ。そして、
そんな事を考えながら、コミネは豆腐を口に入れると、さっきまで熱かった豆腐が温くなっている。ランプのアルコールが無くなって、芯が焦げていた。
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