第2話



 研究所に帰ると、オオサワは昨日までに提出された実験結果を見る。彼の研究は、病原性微生物の中でも癌ウィルスと呼ばれているウィルスのDNAやRNAを調べることにある。一部のウィルスが腫瘍の発現に関与していることは、既に世界中の論文が公表している事でもあるが、彼の研究は、腫瘍の発現機序の解明と制御にある。これによって腫瘍を抑制できるようになると、彼は世界中の有名人、歴史に名を残す事になるであろう。


 気をつけて欲しい。この世界では、そういう人間こそが偽善者であることが多い。


 彼の研究チームには、3人の研究員がいる。元は5人であったが、オオサワの横暴なやり方について行けず、既に辞めて居ない。研究がずさんな訳ではない。研究を成功させるためには人を捨て駒のように使う。


 研究員の一人Ph.D.コミネは思う。オオサワの口癖である。


「君の為になる筈だから」


コミネはうんざりしている。オオサワのこの言葉こそ、相手の事を思う事なく自分自身の保身の為だと。


 他の二人は、それなりに実験をこなしている。一人は派遣研究員で自分に与えられた実験を淡々とこなしている。残り一人は、大学にいた時から天才と言われてきた人物である。その天才と言われてきた人物の名前は、モトキという、現在はM.D.である。前後するが派遣研究員の名はハナダである。


 良くも悪くも、今はこの3人の研究員を中心に、一人の研究主幹とで研究が動いている。

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