エピローグ

 この後、理事長の悪事が表ざたとなり、彼を含め大罪魔法のレプリカ製造と人体移植の実験を行った者たちが逮捕されることとなった。

 そして、逸人たちはと言うと……。




「よかったな。退学取り消せてもらって」



 生徒会に勝った事実は残り、ソフィたちの退学が取り消された。



「それはよかったけどよ~。なんで俺ら退学にさせられそうになったんだ?」

「理事長に聞いたんだが、魔法学園の中でうちの学校だけ成績が悪すぎるから、だってよ。成績悪いやつを追い出してエリートだけの学校にしたかったみたいだぞ」

「そんなの理事長だけで勝手に決めていいのかよ?」

「いいんや、理事長は許可を貰ってたらしい。神代家の当主から」

「神代家? あの大金持ちか。全く面倒なことをしてくれたもんだぜ。で、そこからは俺たちの退学取り消しに関して文句はねぇのか?」

「生徒会に勝てるレベルなら退学にする理由がないから平気だとよ」

「ん~なんか納得いかねぇが、退学にならなかったんなら良しとするか。じゃあ、俺はこの後、用があるんで失礼するぜ」



 そう言って和樹は一人でどこかに走り去っていった。

 残った逸人は先程から反応がないソフィに話しかけた。



「どうかしたか?」

「いえ、その、この学園にあるって噂の大罪魔法、レプリカだったんですね」

「ああ、そうだな……」

「それと上蔀さん、大罪魔法、持ってたんですね」

「そうだけど、でもあれはお前の求めてるやつじゃないだろ? 怠惰の大罪魔法じゃ病気を治すことはできない」

「はい、それは分かっています……」

「じゃあ、どうしたんださっきから」



 ソフィの元気がないことに逸人は気になって仕方がなかった。



「あの……上蔀さんたちはこれからどうするんですか?」

「これから?」

「そうです、私の依頼は噂の調査。そして、その正体がレプリカであることを突き止めました。そうなると、上蔀さんたちがもうこの学園にいる理由がなくなります」

「ああ、そう言うことか。もちろん帰るよ」

「そう、ですよね……」



 ソフィはあからさまにがっかりした。



「なんでそんなに悲しそうな顔をするんだよ。別にもう二度と会えないって訳じゃないだろ」

「うぅ……そうですけど……」



 ソフィが涙目になり、逸人はどうしていいか分からず、頭をかいた。



「はぁ~、ほらよ。これやるから」



 逸人は懐から一枚の紙をソフィに渡した。



「これは……?」

「俺の名刺だ。もしまたなんか困ったことがあれば連絡してくるといい。安くはしないがいつでも依頼受けてやる」

「っ! はい! ありがとうございます!」



 ソフィは嬉しそうに逸人の名刺を抱きかかえる。






「さて、忘れ物はないか?」



 俺は船着き場で藍紗と光咲に声をかける。



「ええ、すぐにでもこの島を出られる準備はしていたし」

「私も。さっさと帰ってゴロゴロしたーい」



 俺たちは荷物をまとめ船に乗り込む。



「んじゃ、行くか」



 来る時は嫌いだった潮の匂いも今日でしばらくおさらばだと思うと名残惜しいものがある。



「逸人、どうかしたか?」

「いいや、なんでも」



 藍紗の言葉に首を振る。



「短かったけど、なかなか悪くはなかったな。祇嶋学園」

「私はもう二度とごめんなのだー。一生部屋から出たくないのだ」

「お前はもう少し部屋から出ろ。そして、俺が買い物行く回数を減らしてくれ」

「逸人のいじわる~」

「ソフィから結構な金貰ったし、しばらくは俺も自堕落な生活したいんだ。明日からはネット通販に頼ってくれ」



 俺たちがいつもと変わらないやり取りをしている間に、船は出航し、祇嶋学園から少しずつ離れていく。



「上蔀さん!」



 そんな時、船着場から俺の名を叫ぶ声が聞こえた。



「あれは……」



 銀色の髪をなびかせた少女がこちらを見ていた。



「ありがとうございましたーーー!!!」



 お礼はもう貰ったはずなんだがな……。

 俺はそう心の中で思いながら拳を突き上げて叫んだ。



「おう! またな!」




 こうして、俺たちの短い学園生活は終わりを告げるのだった。

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守銭奴探偵と落第お嬢様 結生 @sji_12

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