第148話 忍者

「それで、南オミランの攻略はどのように進めるんだ」


レンは軍師サンディに尋ねた。


「南オミランは忍者の国です」


「は? 忍者! マジか」


レンはウォルター王子を「本当なの?」って言う顔で見た。


「本当ですよ。忍者の国です」


ウォルター王子はレンに答えた。


「陛下、私の言葉を信じてください」


「サンディ、ごめんごめん。急に忍者が出てきたので、びっくりしたんだよ」


「言い訳になっていないですけど、まあ良いです。話を進めましょう。忍者と言うのは要するに傭兵です。金銭を報酬に戦いに参加したり、護衛をしたりする傭兵団と仕組みは変わりません。但し、傭兵団と異なるるのは得意な分野が情報収集や暗殺などになるところです。また、その一族によってユニークな術を使うところも特徴です」


「忍術だな」


「そう忍術です。レンさまは忍術に興味がありそうですが、それは別の機会にお話しします。南オミランには五十三家の貴族がいます。貴族と言っても忍者の一族ですね。それぞれの家によって得手不得手があるようです」


「ふむふむ」


「そのうち二十一家が南オミランを収める国王が信頼している家ですが、更にその中でも六家が侯爵家で主に国の仕事をしています」


「ふむ、それで」


「忍者と言っても所詮傭兵です。報酬により仕事を与える先がスポンサー。割と使えるし情報も確かなので、我が国が大口のスポンサーになって、雇い入れました」


「え、そんな簡単な」


「そう、単純で良いのです」


「仕事を与えているんだよね。どんな仕事?」


「各国の情報収集と冒険者ギルドの──」


「え、冒険者ギルド」


「アレス王国から冒険者ギルドを追い出しましたが、ミノス王国の冒険者ギルドが大人しいと思いませんか?」


「確かにそうだね。何も言ってこないし、やって来ない」


「忍者を使いました。まあ、情報操作や暗殺など色々やって貰った結果。ミノス王国とオミラン王国の冒険者ギルドから陛下の手配書は取り下げさせました」


(暗殺って、怖い事をサラッと言うな)


「通りで冒険者ギルド関係の話が聞こえないと思ったよ」


「結果、五十三家のうち三十二家はアレス王国が大口のスポンサーとして、ほぼアレス王国の言う事を聞きます。お金はかかりますがね」


「南オミランの国王が信頼する二十一家以外はこちらの味方になるって事か」


「はい」


「それで、攻略を開始するのか」


「いえ、話はまだ終わっていません。どこの国でも内部で争う者はいます。二十一家も一枚岩では無いのです」


「まさか?」


「はい。ご想像の通りです。国王の信頼が低いと言われている家、信頼されていても何かしら問題がある家をアレスに取り込む事と、信頼が揺らぐ様な噂を流し、または、罠に嵌めて信頼を壊す」


「サンディはそんな事が出来るのか」


「私の力ではありません。ヘレナ王妃の情報収集力と元々それらの仕事に特化しているのが忍者。彼等の力を利用しました。忍者は中々使えます。これからのアレスの目的には必要と判断しました」


「そ、そうか」


「忍者の国は南オミランだけではありません。その南の国もまた忍者の国、イガルダ王国。今回はイガルダの忍者達も雇い入れて仕事を与えています」


「なるほど………」


「その結果、二十一家のうち十一家は取り込む事が出来ました。侯爵六家と残り四家は取り込む事は困難だったため、実力行使に移ります」

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