密室殺人の作り方

辻窪 令斗

密室殺人の作り方

「この中に犯人がいます!」


 私は威勢よく言い放った。その部屋は密室で、被害者の首にはロープが巻き付いていた。容疑者は三人。背の高い男と、小太りの男、八重歯の女だ。


 背の高い男が驚いて私に言い返した。

「な、なんでだよ!?密室だったんだろ?」


 私の想定内の質問だったので、お約束の言葉を口にする。

「この密室にはトリックがあります」


 八重歯の女が口をはさむ。

「トリックって何よ!あんた、ミステリーの読みすぎじゃないの?」

「ご説明します。まず、この被害者の倒れている位置を見てください」

 そういって、私は被害者のそばに行く。


「この部屋には窓はありません。たった一つの出入口である扉に鍵がかけられていて、その鍵は被害者のポケットに入っていた。これで密室という状況となりました。被害者を絞殺した後、どのように部屋の外から被害者のポケットに鍵を入れることができたか。そこがトリックのポイントです」

「いや無理でしょ、どう考えても」

「果たしてそうでしょうか?」

 私は自信ありげな表情を作り、彼らを見渡す。


「被害者は扉の正反対の壁に近い位置で倒れています。これが、ヒントになりました。そう、犯人は……」


 そこまで私が言ったとき、私は首にちくちくした感触を覚えた。


 首に手をやると、ロープが巻き付いていた。


 驚いて私が振り向くと、倒れていた被害者が立ち上がり、自らの首にあったロープを私に巻き付けていた。

 被害者がロープの両端を思い切り引っ張る。気管が圧迫され、呼吸ができなくなる。容疑者たちに助けを求めると、彼らはにやにやしながら私を見ていた。


 「よくやったわ」

 「いい加減うざかったんだよ、こいつ」

 「最後まで痛い奴だったわね」

 「これで、ここの扉を閉めて、密室の完成だ。発見も遅くなるだろう」


 容疑者と被害者は、車で密室から去っていった。

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密室殺人の作り方 辻窪 令斗 @mebius1810

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