第76話 プロジェクト▪雪ウサギ4

◆ナレーター視点

(バッグミュージック▪地上の雪ウサギ▪作詞作曲▪中島雪ウサギ)



「レサか?なんだ、ソイツらは?!工房は神聖な所なんだ。よそ者を入れるんじゃねぇ!帰った、帰った!」


「父ちゃん、助っ人だよ、助っ人!聞いてる?」

「助っ人?何の助っ人だ??」


「もちろん、皇国エールを復活させる為の助っ人だよ」

「要らねぇ、海だか山だか妖精だか知らねぇが、そんな助っ人は要らね…………!?」


ターナーは職人堅気で、他人に工房を触らせるつもりは無かった。だから娘のレサが助っ人を連れて来たと聞いて、追い出しにかかったのだが、空中に浮かぶ不思議な物体を見て、呆気にとられていた。


「レサ、その、ソイツは、なんでぃ!?」

「ああ、この人?」


ターナーの指差した先に浮かぶのは、蝶の羽根が羽ばたく小人。

目を丸くするターナーの前に、くるくると踊りながら現れた小人はニッコリしながら言う。

「こんにちは、カーナと申します。皇国エールの助っ人に参りました」

「う、海だか、妖精だか!?」


ターナーは目をパチクリしてから、自身の目を腕で擦り、もう一度、その人物を見直した。


「な、なんじゃこりゃあーっ?!」

「妖精だよ、父ちゃん。助っ人に呼んだんだよ」


「人間やって三十五年、妖精なんてしらねぇ!その、ダイジョブなんかい??」

「ダイジョブ、大丈夫。カーナ様、お願いします」


レサに言われ、目を丸くしてフリーズするターナー。

その前を通り、工房に入るカーナ。

彼女はそこで持ってきたポーチに手を突っ込む。


実はコレ、カーナの亜空間収納スキル。

そこから出て来たのは、なんとアメフトのヘルメットもとい、あのビール妖精モルト君だ。

それを目を白黒して見るターナー。


「う、うわっ、その小さいバックから一体、何を取り出したんでぇい!?」

「うふふ、これは私のビール妖精のモルト君。美味しいビールを作れる最高のビールマスターですわ」


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◆名前▶モルト▪ラガー

◇素性▶カーナアイーハが無意識に召喚した妖精

◇容姿▶金髪▪碧眼▪褐色肌▪尖った耳▪背中にトンボ羽根 (美男子)

◇身長▶10センチ

◇衣服▶アメフトスタイル(ショルダーパッド▪グローブ▪シューズ)

◇種族▶ビール妖精(妖精族新種)

◇性別▶男

◇年齢▶?歳(寿命▪未設定)

◇スキル▶酵母コントロール、時短熟成、適温管理、ビールプラント召喚(ビールプラント工場召喚、仕込み、蒸留、加熱処理、ビン詰め、梱包までを一貫して行えるオートメーションライン工場)

水召喚(天然水、海洋深層水、温泉水)

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キョロキョロッ

「カーナ様??」


亜空間収納から出てきたモルト君、何故か寝間着姿でトウモロコシの抱き枕を持ち、辺りを見回している。

自分がここに居る理由が分からないようだ。


「ボク、確か自室で就寝してたハズですけど………?」

「モルト君、悪いけど君を誘拐させてもらったわ」


「ゆ、誘拐?!」

「正攻法ではアナタを派遣して貰えるとは思えなかったから、寝てるうちに亜空間収納に押し込んだの。悪かったわねーっ」


「た、大変だ!ボクがここに居るって事は、ビール工場が稼働出来ないわけで、28号社長に怒られる?!早く工場に戻らないと!」


カチンッ

この言葉にカチンときたカーナ。

理由は最近のモルト君の行動だ。

少し前まではカーナ様カーナ様と、カーナの言うことだけを聞きにきていたモルト君。


しかし28号が社長に就任してからは、すっかりカーナから遠ざかってしまっていた。

その挙げ句のこの言動。

カーナがモルト君誘拐に動いた理由はソコにあった。


「最近アンタ、すっかり28号の小飼になってるわよね。どういうつもり?」

「は?どういうつもりとは何ですか?ボクは従業員の一人として社長に忠誠を誓ってるだけです?!」



その背後ですっかり背景になっているターナーとレサ親子、ギムレット商会ハンス会長。

事情がわからず、二人のやり取りを黙って見守るしかない。



「アンタ、私が召喚したビール妖精でしょ。何で28号に忠誠を誓うわけ?アンタを必要としたのは私だったはずでしょ」

「そ、それはそうですが、ビール工場を運営する上でその経営者に敬意を払うのは当たり前の事で………」


「ふーん、そういう事、言うんだ。じゃあ、私に対してはどうなの?」

「カ、カーナ様に!?」


「私がアンタを必要だから召喚したの。そうだよね?」

はい。カーナ様には召喚頂き、感謝しております」


「だったら、これからの行動は私に付き合ってもバチは当たらないわよね」

「………ですが、ボクが工場を動かさないと沢山の従業員が路頭に迷う事に………」


「1日くらい問題ないわよ。だいたいアンタ、このところ休み取ってないんだし、ハッキリ言ってブラックでしょ!今日は私に付き合いなさい!」

「は、はい。カーナ様」


どうやら話がまとまったようだ。

鼻息荒いカーナがクルリと振り向いて、ターナーに顔を向ける。



「それじゃあ、皇国エールビール復活大作戦、開始しようか!」

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