第47話 団体旅行といえば……

あるじ、済まん。其奴そやつらは、イタズラ好きなのだ』


ヒューリュリ様が、首を振りながら答えます。

イタズラ好き……成る程。だから先ほどの笑みは、あの可愛いさから想像出来ないような、悪徳感に満ちた笑みを感じたわけですね。とんだ困ったちゃんです。

しかし、厄介ですね。

勝手に人の考えを読むなんて、プライバシーの侵害以上にヤバい案件です。何か、対策はないのでしょうか?


『人間二ハ、私達ノ言葉ハ伝ワラナイカラ大丈夫デスヨ?女王サマ』


「うーん、うーん、何か対策が必要です。何か対策が。うーん」


『女王サマ?イケメン様二、女王サマノ 極悪ごくあくナ欲望ハ、伝ワラナイカラ平気デスヨ。人間ハ私達ノ言葉ヲ理解出来ナイカラ』


「え、そうなの!?」


私がロダンになって【考え中】をしていたら、雪ウサギが解決案を言ってくれたよ!

なんだ、言葉が分からないなら、伝えたくても伝わらないじゃない。

んん?なんか、さらっと酷い事を言われたような気がするけど、気のせいかしら?

まあ、いいわ。何にしても、これで一安心。


「はあ、良かったーっ。私はあのイケメンを絶対ゲットするんだから。正攻法が駄目なら、あんな事やこんな事をして、あーして、こーすれば、きっとイチコロよ……は?!また、この雪ウサギが勝手に私の思っている事を喋ってたわ。もう、本当に困ったちゃんね!」

『……ぎぬデス、女王サマ』

『……あるじ………………』


んん?

なぜ、二人して情けない顔をしてるのでしょうか。おかしいですね。私、何か、間違った事を言いましたか?

はあ、まあ、いいです。

とにかく、イケメンの代わりにはなりませんが、新メンバーが加わり、此れで、このお花畑も賑やかになるのでしょうね。

あら?

一つ、がありました。さっそく本人に聞いてみましょう。


「ええっと、鉄人、じゃなかった。28号さんは何で私を女王様と呼ばれるのかしら?」


「黒タイツ、マスク、むち、オホホホ?女王様、モット打ッテ?禿はげゲチャびん中年男ガ叫ビ、」


「また、私の思考を読まないで?!それはSM女王よ!」


あるじ、エスエム女王とは一体、何であるか?』


「そこ!余計な事を突っ込まない。漫才トリオか!?私は雪ウサに聞いているのよ!」


また、くだらない話に脱線するところでした。各駅停車ならまだよいのですが、特急だったら、大惨事です。


「はい、雪ウサギさん、もう一度聞きますよ。女王様って何ですか?」

『ハイ、昔、コノ当タリ二、妖精族ガ住ンデイタノデス。ソノ妖精達ヲ守リ、森ヲ守ッテイタノガ、妖精ノ女王様デシタ』


成る程、妖精の女王様が居たと、ふむふむ、んん?

「それで何で私を女王様と呼ぶのかしら?」


『ソレハ、貴女様ガ、ソノ妖精女王様二、ソックリダカラデス』


「え、そうなの?」


『ハイ、ソックリナノデス。妖精女王様ハ、私達ニモ、ヨク声ヲカケテクレマシタ』


「そうなのね。そんな方が居たの………」


何でしょうね、このVRゲームのアバターそっくりって、どういう事でしょうか。

何だか、因縁じみてますね。

うーん、何か、また謎が深まりました。

謎が謎を呼んでますね。

これって、ずっと謎でいいんじゃないかしら。

え?本当にいいのかって?

だって、仕方がないじゃないですか。

分からないものを追いかけても時間のムダですよ!

時間は、モット建設的な事に使うべきです。

でないと、本物のロダンになっちゃいます。うーん、うーんってね。


あるじあるじは確かに妖精女王様にソックリなのだ。我が最初に会った時から、そう思っていたのだ』


「ヒューリュリ様?そうだったんですね。だから最初から私を守ろうとしていたのですね」


『全ての森の者に優しい方だったのだ。森の太陽のように温かい方だったのだ』


ヒューリュリ様が空を見上げて、女王様を思い出している様です。

うん、また、目に涙が光りますね。相変わらず安定の泣き虫です。


「それで、その方は今はどうされているんです?」


あ、私の言葉に二人共、お顔が俯き顔です。これは、聞いてはいけない奴ですね。ということは女王様の身に、何か悲しい事があったのかも知れません。

「ああ、ヒューリュリ様、もう聞かないから、言わなくてもいいのよ」


『……皆、居なくなったのだ』

「え?」


『我が聖獣達を、人間共から守っている間に、女王と、全ての妖精達が居なくなったのだ……』

ヒューリュリ様は、苦々しく眉間にシワを寄せて言いました。

皆で居なくなったと?皆という事は、団体さんという事でしょうか。団体さんという事は、あそこしかないですよね?


「えーと、ヒューリュリ様?皆さんで居なくなったという事は、皆さんでTDLに団体旅行に行かれて、なんか、お仲間を見つけたから、一緒にパレードに出ちゃって、あまりの居心地良さに、キャストになって帰らないとか?」


『何を言っているのだ、あるじ?』




「何でもないです……」

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