第44話

◆カーナ▪アイーハ視点


「あああ、こ、ここは?!」


「テリアしっかりして!」

「テリア、大丈夫か?!」


さて、菜の花 の林を抜けると、雪国ではなく、テリアさんでした。どうやら、目が覚めたようです。オルデアンちゃんとアルタクスさんが、左右からテリアさんに付いております。まだ、少し顔が青いですが、もう大丈夫でしょう。

オホンッ、では、声をかけにいきましょうか。


「ええっと?お三人方さんにんかた、こんにちわ。良い天気ですね?あーっと、お元気?」


ああ、何を私は言ってるんでしょう。

オルデアンちゃんはともかく、イケメンと女性がフリーズしています。

こんな、どんよりとした雪雲の空なのに、良い天気は有りませんよね。何せ、会社でも初対面なお客様には、雨が降っていようと、『良い天気ですね』を連発していた私です。経理課で銀行関係と折衝していた部長の補助をしていたのですが、さすがに部長から『土砂降りの雨に来てくれた客に、良い天気はないだろう』と、たしなめられたのを忘れていました。勿論、ちゃんと謝りましたよ。『ああ、すみません。なんか部長が輝いて見えたから、てっきり良い天気かと。失礼しました』って謝ったんですけど、何故か、鶴ハゲの頭を触りながら、タコみたいに赤くなってたんですよね。お世辞が通じなかったかしら?

はぁ、でも、こういうところだけは、成長しませんね。まあ、一歳ですから、大目に見てくれるでしょう。三年目の浮気じゃありませんしね。


「御使いさ、いえ、カーナ様!テリアが、テリアが目を覚ましました。元気を取り戻しました。これも、カーナ様のお陰です。ありがとう、カーナ様!」


あらあら、オルデアンちゃんが笑顔で私のところに駆け込みました。しゃがんで手を出しております。乗れっていう事かしら?正直、オルデアンちゃんからすると、○ーディ人形サイズの私です。捕まって、くすぐられたら、笑い殺されてしまいますが、まあ、オルデアンちゃんと私の仲です。そこは信じて乗りましょう。

よっこらショッと、はい、乗りましたよ?オルデアンちゃん。おっと、揺れますね?オルデアンちゃんが両手で大事そうに、私ごと、立ち上がります。何何?肩に私を近づけます。

んん?肩に乗れって事ですね。はい、乗りましたよ?おお、ナルホドザワールドです。ちょうどいい視界になりました。

ああ、けれど残念無念。この位置ではイケメン顔が、遥か彼方の雲の上です。そりゃそうだです。オルデアンちゃんは、まだ子供ですから、頭が大人イケメンの腹筋くらいしかありません。腹筋……きっとこの人、6つくらいの山があるのでしょうね。

じゅるっ、は?いけない!

私は今、純真でいたイケな少女の肩に乗っていながら、この最高級なイケメンの腹筋を拝み、おきょうを上げるところでした。イケメンのイケメンによるイケメンの為の腹筋……見たい。

ピロンッ

ん?久しぶりにナビちゃんの音、あら?目の前にモニターが?何々?


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エイブラハム・リンカーンは、アメリカ合衆国の政治家、 弁護士、イリノイ州議員、下院議員を経て、第16代アメリカ合衆国大統領に就任した。名言【人民の、人民による、人民のための政治】は有名である。

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………そんなウンチク、要らんわ!

はあ、はあ、ヤバい。最近、ナビちゃん、ぶっ飛んでない?まあ、いいわ。

とにかく、私はイケメンの観賞をしたいのよ!今世紀最高級なハイパー▪インフレ▪イケメンなんだから、見つめてもバチは当たらないでしょ!


あ、イケメンが膝を折ってオルデアンちゃんの目線にお顔がきたわ。あああ、そのブルーの瞳で私を見つめらておられる。いけない。このカーナ▪アイーハ、羽根が生えて空を飛んでしまいます。パタパタッ、そう、パタパタって、本当に飛んでる!?あうっ、私、最初から羽根が有ったんでした。無意識に、イケメンのお顔に寄りそうになりました。迂闊うかつですね。でもこのまま、なし崩しにキスの一つでも……それは、はしたないですね。私は痴女認定されてしまいます。

また、初対面での馴れ馴れしいスキンシップは、尻軽女とレッテルを張られて、嫌われてしまいます。ここは、おごそかに一歩引いて、おしとやかな淑女を演じませんといけません。おしとやかと言えば、あの方を参考にすればいいでしょうか。


「オホホホ、わーたくし、お蝶夫人で御座いますの。良しなにして下さいませ」




あう、私は誰?


思わずバックハンドで、テニスボールを打ち返した私でした。

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