第45話 別れ
「あの、カーナ様?本当のお名前は、オチョウフジン?なの?」
「スプリング▪エフェメラル様?ではなく、オチョウフジン様???」
「オチョウ?…………っ」
ええっと?オルデアンちゃん、イケメンは、発音が違うけど、お蝶夫人と?それでテリアさん、だっけ?オチョウって、おちょくってんのかーいって!、いやいや、ノリです、ノリですって。
はい、えっへん。喉を整えてと。
「あーっ、ん?只今マイクのテスト中、ごほ、ごほ、ごほ、ちょっとお待ち下さい。んん?はい、オーケーっ、失礼しました。お初にお目にかかります。私がここの花畑の総責任者、カーナ▪アイーハです。カーナとお呼び下さい。皆さんを歓迎致しますよ。カーナ▪アイーハ、カーナ▪アイーハを宜しくお願い致します。私に清き一票を!」
はい。
政治演説には程遠いですが、白手袋にニコニコ手を振って、広報車から挨拶する選挙ガールのイメージで手を振ります。何事も、第一印象が大事ですからね。
「取り敢えず外では何ですので、私の家まで
ご案内いたしますわ。えーと、
バタバタバタバタバタバタッ
『はい、なのだ!?』
おおっと、ヒューリュリ様がドタドタと慌てて参りました。何か、お首を捻っております。何で呼ばれたのか、分かってないようですね。ちょっと、説明が必要ですか?
「えーと、ヒューリュリ様、お客様がお出でです。特に左側のイケメンさんは、ドストライク……じゃなかった、VIP待遇で
『グルルッ、この人間は危険なのだ!
え、ヒューリュリ様が
ええ?!イケメンさんもオルデアンちゃんとテリアさんを守る様に前に出て、低い体勢で剣に手を掛け、居合い抜きの姿勢で対峙するって、一触即発なんですけど!?
ちょっと、ちょっと、ちょっと、ヒューリュリ様、さっき私の命令に従うのが従魔だっておっしゃいましたよね?あれ、嘘だったんですか!?
「……神の森の【
『グルルルルッ、お前達はいつもそうだ。我々から奪うだけだ。森の魔獣も、仲間の神獣も、尊きあの方々も!許さん、許さんぞ!その上、我が
ズアアアッ、ゴゴゴゴッ
ああ、ヒューリュリ様の毛が逆立って、一回り大きくなりました。ヒューリュリ様の回りを激しく風が渦巻いておりますって、わわわっ、本気モードで、これはダメなヤツです。
「ヒューリュリ様!中止、ストープッ!、ダメ、だめ、駄目ですから?!【おいた】はイケマセンってば!!!」
『ぐぐっ、
な、私の命令は届いてるの!?でも、それでも、それに抵抗してまでもイケメンに攻撃したいなんて、私、飼い主として
なんて、言ってるばやいではありませぬ!
私は飛びながら、両手を広げて二人の間に割り込みます。
「駄目だよ、ヒューリュリ様!イケメンさんも剣を退いて、戦っちゃ駄目!」
「ス、スプリング▪エフェメラル様?!」
『あ、
私はそのまま、ヒューリュリ様に寄っていきます。
『
「………」
これは相当に、根深い憎しみがありますね。ちょっと、止まりそうにありません。
私は振り返らずに、両手を上げてヒューリュリ様を牽制したまま、後ろのイケメンに叫びます。
「すみません!イケメン、じゃ、なかった。男性の方、ヒューリュリ様をこれ以上、止めるのが難しそうです。申し訳ありませんが、今は二人を連れて急ぎ、立ち去って貰えますか?お詫びは、後で私が伺いますので!」
「スプリング▪エフェメラル様?!わ、判りました。オルデアン様、ごめん!テリア、行くぞ!」
「み、御使い様!」
「スプリング▪エフェメラル……!?」
はい、イケメンがオルデアンちゃんを抱き上げて、背中を見せました。そのまま、【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の境界を出ていきます。その後を一瞬、私を睨んで、ん?
テリアさんが出て行きました。
あれ?私、テリアさんに何か、恨まれてます?なんで??
は?!私、大変な事を思い出しました!
後で、お詫びに伺いますって言っちゃいましたけど、私、【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の外に出るのは、困難でありました。
だって、冷え症だもの……。
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