第42話 イケメンの使い方

◆菜の花畑(林?)

カーナ▪アイーハ視点


ふぃーっ、ようやく聴覚が戻って参りました。耳鳴りって厄介ですよね。やっぱり耳が、当たり前に聞こえる事には安堵しか有りません。

さて、再び【草葉の陰】から二人を観察、あ、死んでません。念のため。


ふむ、ふむ、オルデアンちゃんはアチコチ見回し、私を捜しておりましたが、何かに気づいてしゃがんだようです。一緒に見回していたイケメンさんも、慌てて座り込みました?

テリアさんが目覚めたのかしら?

もうちょっと、近くに行かないと駄目ですね。けど、飛んでいくのには抵抗があります。菜の花の林を進みましょうか。


あるじ~っ』

「ふぇ?!」


『もう、許して、欲しい、のだ。この体制は、もう、……恥ずかしいの、だ……』


ああ、ヒューリュリ様の声が頭に響きます。


あっちゃあ、すっかりヒューリュリ様の事、忘れてました。あの○ン○ンの体制のまま、フリーズしたままでした。最近このパターン、多いですね。ちょっと自己嫌悪です。ちょっとだけ、ね。

ところで、この頭の中に聞こえるヒューリュリ様の声なんですが、前にヒューリュリ様に聞いた話では、従魔と主人の間では念話ねんわって言って、テレパシーみたいな力が使えるんですって。今、ヒューリュリ様の声が頭の中で聞こえるのは、そういう事らしいのです。


「ヒューリュリ様。もう、あのイケメン、もとい、三人は襲わないと誓えますか?オーケー?」

『誓うのだ。と、いうよりわれあるじ従魔じゅうま。命令頂ければ従っていたのだ』


「命令?」

『従魔はあるじの命令に逆らえない。必ず、従うようになっているのだ』


え、そうなの?

なら、あのイケメンを従魔していいかしら。

なにしろ、女手しかないでしょう?子供オルデアンのお世話が大変なのよ。

それでね、毎日のおさんどんをお願いして、家の掃除、お風呂の沸かし、庭の手入れを頼めないかしら。あとね、最近、肩が凝って困ってるの。冷え症のせいかしら。

ほら、冷え症って、こんな症状があるのよ、大変でしょ。

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手足が冷たい、温めてもなかなか温まらない

あかぎれ・しびれ・しもやけ

関節痛・腰痛・頭痛・肩こり

ほてり・のぼせるような感覚(冷えのぼせ)

気温が高い日でも汗をかかない、身体が冷たい

寝起きが悪い、寝坊しがち

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だからね。

かわりに何でもやって貰えるイケメンが必要なのよ。

え?ヒューリュリ様?

駄目よ、あんなの。番犬にしかならないわ。え、可哀想かわいそう?んん、確かにそうだけど、困る事があるのよ。


さっき言った冷え症の症状で【寝起きが悪い】があるでしょう?朝、起こして貰うのに、あなたならどちらを選ぶ?


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◇イケメンの場合

イケメンの人差し指が、私の頬っぺたを優しく押します。

「ん…」

「やあ、起きたかい?おはよう、僕の可愛い人」

「あと……少し……眠いの」

「困った人だ。ほら、清々すがすがしい気持ちのいい朝だよ」

「起、こし、て」

「……仕方ないな、ほら、顔を上げ」

ちゅっ

「な?!」

「うふっ、真っ赤になってる、可愛い!」

「……まったく、君は。僕の心臓がもたないじゃないか。困ったちゃんだ。僕の可愛い人」

「あ、いい匂い?」

「君の為に、美味しいモーニングコーヒーを入れておいたよ」

「嬉しい、有り難う」

「どういたしまして、僕の可愛い人」


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◇ヒューリュリ様の場合

肉球の足が頬っぺたに、ペタ。

「ひゃう!?」

『ガウガウ、起きるのだ』

「肉球が冷たいわぁ、ビックリして目がさめちゃたーっ。臭!?ちょっと、ヒューリュリ様!臭いんだけど!?」

『ガウガウ、済まん、さっき近くの電柱で用を足したのだ』

「ぎゃーーーーーーーっ?!」


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ね、想像しただけで、すぐ分かるでしょ?

やっぱり、イケメンの方が絶対お得よ!しかも、従魔にしちゃえば、どんなにイケメンでも大丈夫。

え?何が大丈夫って?

そりゃ、あそこまでイケメンだと、浮気が心配じゃないですか。でも、従魔にしちゃえば絶対に裏切らないでしょ。

ふっ、ふっ、ふっ、私だけが自由に出来るイケメン!私だけに尽くすイケメン!私だけを全て優先してくれるイケメン!私の為に家事をやって貰えるイケメン!将来、子供が生まれたら、子育てしてくれるイクメン!頭が良くて、医師免許持ちのイケメン!一千億円企業の社長なイケメン!どんなイケメンでも、私の従魔にしてしまえば、そのイケメンは思いのままよーっ!世界のイケメンは私のものよ、おーほ、ほ、ほ、ほ、ほ。


『……あるじ、何やら良からぬ事を考えているようだが、人間を従魔にする事は出来ないぞ』

「へっ!?」


『従魔に出来るのは、昔から魔獣と聖獣と決まっている。人間にはテイマーの能力は効かないのだ』



なんですと!?

がーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!

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