第41話 試練

◆アルタクス視点

回想


まばゆい光が起きた。

マスター▪ラクネスが手を振った時、正面にある一冊の本が輝きだし、それが部屋全体を飲み込んだのだ。あまりの眩しさに私は、目を閉じて光が消えるのを待った。



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「うっ、こ、ここは!?」


私が目を開けると、辺りはいつの間にか森の中だった。勿論、森は雪に閉ざされている。

見回した私は、人々の気配を感じ、その気配のする方に向かって行った。

林を抜けるとそこには、突然広がる花畑、暖かい風、まさに楽園が広がっていた。


「す、凄いな?!」


何だ、誰が喋った?私の声か?いや違う?!勝手に口が喋ったんだ?身体も勝手に動いていく?どういう事だ?


『来たかミゲル、遅かったな。これからショーが始まるぜ。見ものだな、くく』


うっ、なんだ、コイツは?

ミゲル?って、誰の事だ??

騎士の格好をしているが、まるで、ならず者のような男だ。

それに私の知らない紋章を、鎧に付けている。何処の国の者だろう?


「俺にも分け前があるのか?のけ者は困るぞ」

『大丈夫だ。奴らは沢山いる。一匹残らず捕まえろとの、王からのご命令だ。一匹につき、金貨十枚貰える。大金だぜ』


ならず者のような騎士?は、私を先導するように、私の前を歩きだした。うう、勝手に身体が動いていく。気持ちが悪い。

しばらくすると、前を歩いていた男が振り向いた。


『そうだ、大事な事を忘れていた。奴らを捕まえたら、羽根を切るんだそうだ。さもないと、魔法を使って反撃されるぞ。もっとも、一番強力な魔法を使えるのは、だけだ。あとは何とかなる』


「森の白き悪魔はどうする?」


『ああ、奴は森の外に誘いだした。仲間の聖獣を囮にな。しかし、なんだな。奴らと友好関係を結ぶ振りをして、闇討ちするって、王様もヒデェ事を考えなさる。さすがのオレでも考えつかねぇ。オレ達の王様は中々エグいな。感心するぜ』


「ふ、全ては我ら、人族の為だ。王は人族の救世主になられる。滅多な事を言うものではない」

『違いない。差し詰め我らは、その使徒しと様かな?くくく』


この身体は、相変わらず勝手に喋って、動いていく。だが、喋っている事の意味が、よく分からないし、本当に気持ちが悪い。

ん、なんだ?

数人の人間達と、あれは!?




【そして、私は見てしまった】




後戻り出来ない恐ろしく、取り返しのつかない悲しい出来事を…………………………



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どさっ、「が、ううう、は?ここは?」


「試練は終わった」

「?!」


私、アルタクスは、いつの間にか、再びこのテータニアの王城に戻って来れたようだ。その私をマスター▪ラクネスが覗き込んでいる。

私は、私達は、本当に!?


「マ、マスター▪クラネス!わ、私は、私達は、なんと恐ろしい事を、なんと罪深いっ」


「………そうだ。その罪深い事が【カルマ】なのだ。王族はその【カルマ】から逃れられない。あのオルデアンも、試練を受けたアルタクス、お前も、そして、私もな」


涙が今も止まらない。あああ、死んでしまいたい。何故だ。何故、人間はあんなにも!許してくれ、お願いだ。私を誰か、殺して!


ガンッ、「かは!?」

突然、衝撃が走り、私は床に転がった。いったい何が?!


「負の力に飲まれるな、よく自分を見ろ!」

「マ、マスター▪クラネス……」


どうやら、マスターが私を殴ったらしい。私は一体、どうしたというのだ?自分を見ろ?

なんだ、私の身体から黒いモヤのような?!


「それがスプリング▪エフェメラルの呪いだ。しっかりしろ!負の力に飲まれれば、生者せいじゃでいられなくなるぞ!!」

「呪い……スプリング▪エフェメラル様の」


身体から出る黒きモヤの様なもの。これが、あの尊き方の呪い……。


「聞け、アルタクス。お前はオルデアンの近衛になり、剣を捧げたのであろう?その程度の呪いをぎょしえなくて何とするか!」


そうだ。

私は、オルデアン様に剣を捧げ、近衛になる為にここに!

「マスター▪クラネス、醜態しゅうたいを晒しました。私はもう、迷いません」


「そのげんは良し。くれぐれも初心を忘れず、強い意志を保て。さすれば、呪いは意味を持たない。見ろ」

「!?」


さっきの黒いモヤが消えている?


「その黒きモヤは、呪いを受けた者だけに見え、心弱き時にそなたを負の感情に誘 《いざな》う。くれぐれも心せよ!」


「はい!マスター▪クラネス」


こうして試練を終えた私は、晴れてオルデアン様の近衛となり、従者としてオルデアン様を守る事を許されたのだ。



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そして今、私の目の前に、あの時の光景が甦る。あああ、私は貴女に貴女達に許されたいのだ。


貴女に懺悔ざんげを………。

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