第39話 (再会)

直ぐに【白鳥の湖】をやって【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】をオルデアンちゃんと、倒れている女性のところまで広げました。これで体力だけは改善できる訳ですので、少しは時間が稼げる筈です。

「み、御使みつかい様、テリアが熱いです。テリアが、テリアが、うわああん!」


「カーナです。オルデアンちゃん、落ち着いて!」

やっぱり、体力回復だけじゃ駄目ですか。どうすれば………あとは私の銀の羽根、銀鱗粉ですが確か、体力と傷の回復だけだった筈。毒の解毒は出来ない可能性があります。けれど、他に思いつきません。やるだけやってみましょうか。


私は空中に舞い上がり、くるくる踊りを踊ります。

『空よ、風よ、輝いて、命の花を咲かせます。弱りし者にその愛を、傷つきし者に祝福を、ティターニアの盟約により、世界の力を今ここに!ヒーリング!』


リイイィーンッ、リイイィーンッ


私の銀の羽根が輝いて、銀鱗粉が舞い散ります。テリアさんとオルデアンちゃんのところまで、くるくるくるくる舞い散ります。ほら、ほら、ほら、テリアさんの腕の怪我、あっという間に消えていく。これが私の銀の羽根、その銀鱗粉の力です。


「っ、テリア、テリアの怪我が消えた?御使みつかい様、有り難う御座います!」


オルデアンちゃんに感謝されました。ふう、これ、結構疲れるんですね。踊りのせいかと思いましたが、其だけでは無いようです。さて、テリアさんはどうでしょうか。これで身体が治ってくれればいいのですが。


「ごほ、ごほ、かはっ、うあ」

「テ、テリア、い、いやああ?!」


っ、地面が赤く染まりました。テリアさんが血反吐を吐いたせいです。不味い、これは毒のせい。私の銀鱗粉はやはり、毒には効果がありませんでした。体力も傷も回復したのに、毒がテリアさんの命を奪い去ろうとしております。いったいどうすれば!?


ザッ、ザッ、ザッ


は?!

人の気配です。まさか、さっきの盗賊団ではないでしょうね!?


ザスッ

「オ、オルデアン様、何処いずこに居られますか!?」


こ、これは!?

林のあいだからイケメンです。

めちゃくちゃ凄いイケメンです。黒髪、青目のイケメンと言う種族に出逢いました。肩を押さえて、ややポンコツ感が母性愛をそそります。顔偏差値、三百パーセント!!?これなら、さっきの男前ワイルド盗賊なんか目じゃありませんよ。これは貴重です。じゅるっ、すぐに網で捕まえて監禁………は?!

い、今、私は何を考えていたのでしょうか?

ああ、記憶にございません。善処いたします。勝手に秘書がやった事です。忖度そんたくで勝手に……。

などと、バカやっている場合ではありません。人の生き死にがかかっているのです。こんな時に、イケメンが現れたくらいで我を失うなど、自分ながら情けないです。ですが、銀鱗粉も使った私に打てる手は、もうありません。


「アルタクス!!」

「な!?姫?近くにいるのですか?お姿が見えません。ずっとお捜し申し上げでおりました。姫!どちらにお出でですか!」


うーん、オルデアンちゃんの知り合いでしたか。思わずオルデアンちゃんが叫びました。後で、オルデアンちゃんに紹介して頂きましょう。是非ともお近づきに、じゃなかった。私が了承しないと、あの方は此方を認識する事も、入ってくる事も出来ないのでした。では、さっそく承認を


『貴様、人間!何故ここに居る?!』

「くっ、白い悪魔!」


シュパパパパッ、ザンッ、ザンッ、ザン!

ああ!ヒューリュリ様が現れて、魔法をイケメンに放ちました!?イケメンの近くの木々が、真っ二つです?!イケメンが上手く避けたのでイケメンの美貌は保たれましたが、イケメンが怪我でもしたらどうするんですか、ヒューリュリ様!!貴重なイケメン資源が失われるところです。あ、でも、戦っている姿もカッコいいわぁ!

「アルタクス!?御使みつかい様、ヒュー様をお止め下さい。アルタクスは、私の従者です!!」


は?!

いけない、オルデアンちゃんに言われるまで、イケメンに見とれてました。オルデアンちゃん、ヒュー様?なんかカッコいいですね。けど、イケメンを襲う者は敵です!許すマジ、ヒューリュリ様!もはや、アレをヤるしかないでしょう!私は息を吸い込み、一気に大気を奮わせます。言いますよ!


「○ン○ン!!!」


『ぐわっ、な、なんだ!?身体が勝手に立ち上がって、ぶわあああ???○ン○ン!?な、あ、あるじ?何だか情けないぞ!?止め、』


「○ン○ン!!!」、「○ン○ン!!!」、「○ン○ン!!!」、「○ン○ン!!!」、「○ン○ン!!!」、「○ン○ン!!!」、

「○ン○ン!!!」、「○ン○ン!!!」、「○ン○ン!!!」、「○ン○ン!!!」、「○ン○ン!!!」、「○ン○ン!!!」


あるじーーーーーーーっ!?』


ふう、とうとうヒューリュリ様は、体勢のまま泣き出しました。ちょっぴり、お仕置きが過ぎました?でも、貴重なイケメンを狙ったんだからこのくらい、いいですよね。貴重ですからね、貴重。(三回言った)


「うぐっ、し、白い悪魔!?なんだ、あの体勢は?新しい魔法を放つつもりか!」

あちゃー、イケメンが大きな勘違いをしております。ヒューリュリ様も、体勢のまま、イケメンの攻撃を受けるのは不本意でしょう。では、では、イケメンよ、お出でませ!

「イケメン、承認!」


「は???!、オルデアン様が突然、私の前に?!オルデアン様!」

「アルタクス!アルタクス!アルタクス、会いたかった、アルタクス!」


バッ

「オルデアン様!」

「アルタクスーっ!良かった、アルタクスが無事で本当に良かった!」



おお、感動の再会です。二人は駆け寄り、しっかりとお互いを抱きしめました。



こうして二人は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。……って、終わらせてどうすんの!

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