第36話 トラウマ

◆ログハウス内

カーナ▪アイーハ視点


女の子と意思の疎通ができるようになって、1日が経ちました。

あれから女の子と色々話した結果、外の事が何となく見えてきました。


あ、女の子の名前が分かりました。女の子の名前はオルデアンちゃん。

まだ八才。

身長は年齢からすると、120センチ位。(私の背丈から判断)

小学2年生くらいです。

日本の同年齢の子からすると、ちょっと小さいのでしょうか。まあ私からすると、鎌倉の大仏より小さいくらいなので、実感はありませんが。

時代背景は中世ヨーロッパでしょうか?交通手段に未だ、馬車を使っているところから判断しましたけど、多分、間違いではないですよね。

などと、私は今、ちゃぶ台で聞いて、分かった事をメモしてます。メモ用紙と筆記用具は、私の亜空間収納にゲーム内からありましたので、それを使ってます。

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①女の子の名前◇オルデアン

②年齢◇八歳

③出身国◇テータニア皇国

④身分◇第三皇女

⑤盗賊?に襲われて保護者とはぐれた。(盗賊がいる?近くに?)

⑥人間は魔法を使えるけど、魔石がないと使えない。

⑦世界は一年中、冬。(寒いよーっ)

⑧国は魔法的な結界で守られており、一年中、春。

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予想はしてましたが、やはりここはゲームの設定にない本当に別の世界のようです。この先、何が起こっても不思議ではないという事でしょう。いろいろと警戒が必要という事ですね。

しかし、盗賊って物騒ですよね。やっぱり、どこにでも悪い人はられるようです。

でも、一つ謎が解けました。

人間がヒューリュリ様達を襲い、魔石を奪う理由は、魔石があれば魔法を使う事が出来るということです。どんな魔法があるのか、オルデアンちゃんも把握してないようですが、科学が発達してない理由は、魔法のせいでしょうか。

あとあとあと!

オルデアンちゃん、なんとお姫様だったのです。テータニア皇国第三皇女?

ヒェエーッ!?なるほど、豪華なドレスを着ていたわけですね。今はジャージ姫ですが。

それと、一番困った情報を頂きました。

この世界、一年中が冬だそうです。つまり、冷え症の私には過酷な世界ということです。当面、小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリから出るのは難しそうですね。


さて、取り敢えず朝食の準備に入りますか。

ログハウス内には簡易のキッチンがあり、食器棚にはこの世界の人間サイズの食器が入っておりました。私のは亜空間収納にキッチンセットがありますから、必要ないですものね。

食材については、いい加減飽きておりますが、他に食材がないので仕方がありません。

あ、なら、菜の花のおひたしを作りましょうか。サラダにするのもいいですね。あとは、お茶の花も取ってあります。前にも言いましたが、お茶の花は天ぷらにして食べたり、煮詰めてお茶漬けの具にしたりして、食べられますので、これも料理に使いましょうか。

んん?

そういえば、彼女の好みを聞いた事がありませんでした。それに、この世界固有の食材を知りたいですね。食材によっては、新しい食の世界を開拓出来るかも知れません。


「食材ですか。私、スライムは好きではありません。なんか噛むと、もきゅッ、きゅ、きゅッきゅって歯に挟まる歯ごたえが嫌だし、噛むたびに、ぐにゃぐにゃ動くのがキライです」

スライム?スライムっているの!?

スライムって、あのRPGの序盤に出てくるやられキャラですかね。きゅッ、きゅって歯ごたえ?で歯に挟まるの?噛むと動くの?!踊り食いなんですか?それは私もいやです。うう、聞かなければ良かったよ。

取り敢えず今回は、私のキッチンセットから、骨付き漫画肉(ベーコン味)、バッテン目お魚(鮭味)、葉っぱ野菜(レタスとほうれん草の中間)を出し、十合炊き(カーナサイズの十合)電子ジャーをMAX炊きして、一枚のお皿に盛り付けました。いわゆるロコモコ丼です。あ、盛り付けは私が一に対し、彼女が十です。まあ、肉体的な差として、この位ないと育ち盛りには酷というものです。

ふう、盛り付けだけで結構な重労働です。過重労働でまた過労死したら、次は何に転生するのでしょうか。考えたくもありません。


「オルデアンちゃん、朝ご飯出来ました。食べに来て下さい」

ログハウスが珍しいのか、あちこち見て回っていたオルデアンちゃん。

私の呼び掛けに、花が咲いたような笑顔で走って参ります。

この子、天使やないかい。

御使みつかい様!」

「カーナです。先ほども言いましたよね」


「ああ、ごめんなさい。、カーナ様!」

「様も要りません。カーナと。私は別に神様でも何でもないですからね」

はあ、この子、素直でいい子なんですが、意外と頑固なところがありますね。


オルデアンちゃんは、自分のちゃぶ台に座ると、目をつぶってお祈りします。食事前に、神に感謝をするのだそうです。

『いただきます』の語源も神様への謙譲語けんじょうごが変化したものですから、食事の前の神への感謝は、万国共通なのかも知れませんね。

「スプリング▪エフェメラル様、今日のかてを有り難う御座います。あなた様に大いなる感謝を……」


スプリング・エフェメラル、春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、あとは地下で過ごす一連の草花の総称で春植物とも言います。たしか、【春の妖精】って意味があったような気がします。神様の名前が【春の妖精】って、どういう訳なんでしょうか?謎ですね。


ところで、もう一人?一頭?一匹?は遅いですね。ご飯が冷たくなっちゃうじゃないですか。全くもう、ばらばらに食べられるのも後片づけをする身にもなってほしいものです。

私は、鍋の底をオタマで叩いてヒューリュリ様をお呼びします。

カンッカンッカン、カンッカンッカン

「ヒューリュリ様ーっ!朝御飯、冷えちゃいますよ。早く食べに来て下さい」


私は花畑を見回して、ヒューリュリ様を捜しますが、ヒューリュリ様は一向に出て来ません。この花畑の中に居るのは分かっているのですが、何故か、昨日から出て来ません。

全く、泣き虫ワンコは世話が焼けますね。きっとカミカミを私が取り上げたから、ねてしまったようです。

しょうがないですよ。あれをヒューリュリ様がお持ちである限り、正気を失ってしまいますので、当分の間、ご褒美は封印するとヒューリュリ様にお伝えしたんです。その時のヒューリュリ様の落胆ぶりは、そりゃもう、酷いものでしたよ。

でも毎回、ヨダレまみれの骨モドキを押し付けられる飼い主の気持ちになって下さい。


私、小学生の時、おす猫を飼った事があったんですが、あの子にもよくプレゼントをされたものです。

名前が玉男たまお

おす猫だから玉男たまお。安直な名前をつけてたせいか、懐かないのに、いつも私の部屋にプレゼントを置いておくのです。

そのプレゼント、良いプレゼントならいいのですが、たいていは、玉男たまおにとっての良いプレゼントなのでしょう。いつも置いてあったのは、大きなドブネズミ……猫の習性、獲物の見せびらかしなんですが、はた迷惑この上無し。私の部屋はドブネズミの血で、時々血だらけでした。

ハッキリ言って、今でもトラウマなんですよね。

まあ、カミカミ骨モドキなら、勘弁しましょうか。


あるじーーーーーーーっ!』


あら?ヒューリュリ様が森の奥から現れました。花畑の中にいたのではなかったの?って、なんか引き摺りながら、此方に来るんだけど、何を引き摺っているのでしょう?

あるじ!魔物の大毒おおどくネズミだ。有害で、神の森の木をかじって枯らしたり、おとなしい聖獣を襲ったりする害獣だ。しかし、旨いのだ。是非、あるじに喰わせたくてな』


そこには、どっから見ても、あのドブネズミソックリな血だらけの巨大ネズミが、横たわっていたのです。


私のトラウマがデカクなって再登場!?

ぎゃあああ~っ!

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