第21話

◆カーナ▪アイーハ視点


ぬかり油断▪手落ちました。

この結果を招いた責任は全て私にあります。

【たくあん】のぬか漬けをこしらえて責任取りたくなりました。

あ、因みに【たくあん】の発祥は江戸時代です。

臨済宗りんざいしゅう沢庵宗彭たくあんそうほうという僧侶が考案したのが最初で、名前もこの僧侶から取ったとの事です。

徳川家康がこのお漬物を大変気に入ったそうで、まだ名前がないと知ると「じゃあ、沢庵たくあん漬けでいいだろう」と呼ばれる事になったとか。

なんたるアンチョビ、じゃなかった、安直な決め方でしょうか。

まあ、考案者の名前由来の物は案外多いようなので、こんなものかも知れません。

あ、純粋な沢庵漬けの話です。

ぬか漬けは別ですね。

え?

なんで唐突に【たくあん】のの話しをしているのかって?

え、エヘヘへ、いいじゃないですか。

気にしない、気にしない、一休み、一休み。

最近坊主が気になる?

そうですか。

いえねぇ、丁度お花摘みによい頃合いになったかな~っと思っておりまして、ほら【たくあん】食べたとか言えば何かと誤魔化せるじゃないですか。

だから


ピロンッ


『【大根のたね】が召喚可能になりました』


……………………は?


▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩

名前▪▪▶カーナ▪アイーハ(異世界転生者)

レベル▪▶8(?)

種族▪▪▶花妖精(新種族)

羽根▪▪▶銅色

容姿▪▪▶金髪▪碧眼▪白い肌▪長耳

衣服▪▪▶春のワンピース(淡ピンク)

性別▪▪▶女

年齢▪▪▶1歳(寿命未設定)

身長▪▪▶10cm

体重▪▪▶秘密

バスト▪▶絶壁(成長次第)

ウエスト▶これから(さあ?)

ヒップ▪▶まだまだ(ガンバ)

特技▪▪▶タンバリン応援(?)

スキル▪▶亜空間収納

スキル▪▶銅鱗粉【成育空間システム化】

スキル▪▶種▪球根召喚

スキル▪▶【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】直径5m(統合化▪数m以内のサンクチュアリを統合出来ます)

スキル▪▶お風呂セット(シャワールーム大きさ変更可能。使う者のサイズに合わせ、自動でサイズアップ)

スキル▪▶テイマー

従魔▪▪▶聖獣フェンリル(個体名ヒューリュリ)

召喚可能▶ガーベラ◇チューリップ◇オオイヌノフグリ◇フリージア◇エーデルワイス◇菜の花◇ヒヤシンスの球根◇大根のたね(ぬか漬けセット付)

▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩

いやいや何してくれてるのかな、このナビちゃんは!?

レベル上がってないのに【大根のたね】を召喚可能って、何?

しかも、ご丁寧に(ぬか漬けセット付)…。

いや、分かりませんか?

あの【たくあん】ぬか漬けの話しは、この目の前の状況と今後迎えるであろう、私の結末から少しでも現実逃避したくて脳内お花畑的な思考を繰り返した副産物であって、ああ?自分でも何考えてんだ状態なんです。

それくらい切迫せっぱくしてるんですってば!!

はあ、はあ、はあ、はあ

うう、おなか押されて、もう限界…。

ホントに恨みますよ、ヒューリュリさま!

あう、自業自得ブーメランでもありましたか。


んん?


なんでしょう?

急におなかを押される力が弱りました。

理由が分かりませんがこれはチャンスです。

一気に抜け出しましょう。


とっ!?

「き、きゃあああーーーっ!!」


ドサッ、バサッ、ドスッ


たたたっジェットコースターに投げ出されたので、しこたまお尻を打ちました。

一体、何事!?


ああ!女の子があまりの恐怖に気絶してしまいました。

でもヒューリュリ様は、今度は私の方に向かって来ております。

女の子は……大丈夫そうです。

いや、私が大丈夫じゃありません。

女の子なら普通の【お手】でしょうが、10センチ程度の私には、ヒューリュリ様の肉球を受けきるだけの包容力はありません。

煎餅せんべいになってしまいます。

煎餅せんべいは食べるのは好きですが、自分がお煎餅せんべいになるのは御免被ごめんこうむりたいです。

ここはヒューリュリ様に泣いてもらいましょう。



【伏せ】



はい、全て解決ですね。

月に代わってお仕置きよ!

では私、なんちゃらムーンは無事、難事件を解決してプライベートルームに消えるのでありました。

たっ、たっ、たっ、颯爽さっそうと退場!(全力疾走)

と、いう事で…しばらく、呼ばないで下さい。

バタンッ



しーーーーーーーーーーーーーーーーんっ



◆◆◆



オルデアン視点


お父様、お母様、先立つ不幸をお許し下さい。

私、オルデアンは、大きな白銀色狼に食べられてしまいました。

せめてもの救いは、最後に【御使いさま】にお逢い出来た事。

どうか、どうか、御使い様。

皇国の守護神さまにお伝え下さい。

オルデアンは、いつまでも皇国の幸せを祈っております。

どうか、お父様、お母様が幸せで有りますように……。

アルタクス、テリア、どうか無事でいて。

さようなら、みんな。

さようなら、私を愛してくれた全ての人へ。

…………。


ガバっ


は?!

私、生きてる?

どうしてなの?

あの白銀色の大きな狼はどこ?

でも、やっぱり私、死んだのかしら。

だって周りはあの時の綺麗な黄色いお花畑。

御使い様に出逢った、あの幸せの場所のままだもの。

私は念のため、自分の手、足、身体がちゃんと付いてるか確認したけど、特に異常は無し。

大きな狼に襲われたのは夢だったの?

では、御使い様との出逢いも夢だったのかしら。

「御使い様、どちらにおでですか!」


居ない、居ない、御使い様が、あの可愛い御使い様が居ないわ。

ああ、御使い様。

きっと私の身代わりに、あの狼に食べられてしまわれたのだわ。

なんて事!

私は怖がるだけで何も出来なかった。

あんな小さく可愛い御使い様に、お命を捧げさせてしまったのね。

なんて罪な事をしてしまったの。

ああ皇国の守護神様、どうかお許し下さい。

あなた様がお使いになられた、大事な御使い様にお命を捧げて助けられてしまいました。

どうか、お怒りにならないで下さい。

私はどうなっても構いません。

けれど、お父様、お母様を、皇国を、アルタクス、テリアを、どうか御守り下さい。

私は膝を地面に付け、両手を組んでお祈りしたの。

………………

どれくらい、お祈りをしていたかしら。


じゃ~っ


何処かで、お水が流れる音が聞こえるわ?

後ろから?

私は後ろを振り返って、息を呑みこんだ。

だって黄色いお花の中に、あの狼がいたんだもの。

またオムねがドキドキして汗が出る。

どうしよう!?

大きな狼は寝そべっていたわ。

そこで寝ていたみたい。

きっと御使い様を食べて、おなかがいっぱいだったのね。

でも、なんだか変だわ。

大きな狼のお目目がうるうるして、え、これは涙!?

とても情けないお顔をしているわ。

しかも、お顔の辺りに大きな水溜まりが出来ているような…。

まさか、涙が溜まって出来た水溜まり…の訳無いわよね?

ああ、まだ泣いている!?

頬を伝って、水溜まりに落ちてるわ。

ええーっ、凄い涙の量!



いったい何が、そんなに悲しいの???

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る