第18話
◆オルデアン視点
こ、怖い。
なんでしょう、この緑の小さな魔獣は?
私をどうしようというの?
突然、お花の間から小さな人影が現れたの。
その人影はお花の葉っぱを身体にまいて、穴をあけたところから手足を出している。
顔も葉っぱで隠れていて、何だか魔獣の一種に見えるわ。
見るからに怖い姿、このお花畑に住んでいるみたい。
ひょこひょこ現れては何か置いていくのだけど、まったく声すら発しないでとっても不気味。
でも目の前に並べられた物は食べ物かしら?
とっても美味しそうな匂いがするの。
今にもお
待って、オルデアン?!
きっとこれは全部、毒。
テリアが言っていたわ。
見知らぬ物は決して口に入れてはなりませんって。
大抵は毒入りで私を害する物だから、近づくのも駄目ですって。
とくに魔獣は人間を襲うもの。
これはきっと罠ね。
あの魔獣は見るからに小さく力が弱いのだわ。
だからこうやって美味しそうな物を出して油断させ、食べて毒で死んだ私を後で食べる気なんだわ。
だって、あんな葉っぱで全身を隠しているなんて可笑しいもの。
きっと恐ろしい姿を隠しているのだわ。
こ、怖い。
ここは神様の素敵な世界ではなかった。
きっとあの魔獣が獲物を狩る為に作った偽物のお花畑だったのね。
こんな、お花が綺麗な色をしている訳はなかったのよ。
最初から罠だった。
私、捕らえられたのかしら?
怖い、怖い、怖い。
逃げないと!
誰か、誰か、助けて!
テリア、アルタクス!!
▩▩▩
◆カーナ▪アイーハ視点
うーん、困りました。
女の子がフリーズしたまま、私の方を凝視しています。
よっぽど霊感のある子なんでしょうか。
ある意味、羨ましいですね。
学生時代はそういった話題についていけませんでした。
よく友達がトイレで花子さんを見たって言ってましたけど、吉○のタレントがしょっちゅうこんな片田舎の高校のトイレをわざわざ使いに来るって確かにホラーですよね。
しかもトイレで漫才なんて、きっと臭い漫才しか出来ないと思いますよ。
はあ、でも何とかしなければなりません。
だってあの子の顔は恐怖にひきつっておりますが、しきりに私が出した料理を見たりしております。
きっとお腹が空いているのに怖い何かが見えて、気になって料理に手が付けられない、そんなところでしょうか。
ならば私が口元まで持っていけば食べてくれるかもしれません。
でもどうしましょうか。
私からすると女の子は、三階立ての戸建て住宅。
お座りになっておりますから今は二階立てでしょうか。
このままでは私は、女の子の身体を料理を持ちながらよじ登らねばなりません。
いわゆるボルダリング状態です。
はあ私、この競技やった事はありません。
結構ハードワークですし万が一
そもそも、近くにクリーニング店があるのでしょうか。
あのドレス、絶対ドライクリーニングしないと色落ちとかしちゃいそうで不味いです。
それ以前に、この世界の通貨を持ってませんよね。
は?!
私、今さらですが無一文、ルンペン状態じゃないですか。
大変です。
早く何処かに就職しないと将来の年金が心配です。
何処かにハローワークがあるのでしょうか。
むむむ、あら?
そうでした。
私、飛べるんでした。
でも、この葉っぱが邪魔で羽根を動かす事が出来ません。
最初から羽根や手足を出す穴を作ってから、葉っぱにマキマキすれば良かったのです。
それにこの葉っぱコート、結構ムレるんですよね。
まあ、
もう仕方ありませんね。
潔く脱いでしまいましょう。
手足を引っ込めて、んん?
あらら、上手く脱げないですね。
なんだか足が
ふえええん、転んで頭の葉っぱが取れてしまいました!
もう、とんだドジ花妖精です。
結局、姿を晒す事になってしまいました。
さっそく約束を守れず情けない状況です。
しかも
うう、急にどうしたんでしょう?
何だか悲しくなってまいりました。
たかが
精神年齢、三十路間近の私が悲しみを抑える事が出来ません。
これ、この身体年齢に引っ張られているみたいです。
あああ、悲しみが込み上げて感情をコントロール出来ない…泣きたい、泣き……
「うわあああん、わあん、うわああーん」
▩▩▩
◆オルデアン視点
ええ?!
あの小さな魔獣が葉っぱを脱ぎ出したわ。
ひぃっ、どんなに
きっと私が料理を食べないので痺れを切らしたのよ。
こ、怖い。
これから私、どうなってしまうの!?
に、逃げないと!
ああ?!、足が痺れて立ち上がれない。
こっちに来るわ。
ひょこ、ひょこ、って変な足取りで近づいてくる。
誰か、誰か、助けて!!
は!?
パタッて目の前で倒れた???
もぞもぞして身体に巻いていた葉っぱを脱ぎ捨てた?
え、ええっ!?
さらに、勢いで顔の葉っぱが取れて…………
え?
ええぇーーーーーーーーーーーーーーっ!?
か、か、か、可愛いーーーーーーーっ!
可愛い、可愛い、可愛い!!!
て、天使、天使だわ?!
天使がいる!
あ、でも、背中の羽根が違う気がするわ。
天使なら背中の羽根は鳥の羽根のはず。
でも、でも、けれど、何処かで見たような…
そうだわ!
昔の図鑑で見た事があるのよ。
たしか、確か、……ちょうちょ?
ちょうちょの羽根?
昔、この世界にいたとされる、コンチュウの仲間に、ちょうちょという種がいたと皇国の歴史の授業で習った事があるわ。
だとしたらこの小さな女の子はいったい何?
図鑑のちょうちょとはまったく違うわ。
でも、何処かで見た事がある。
皇家の…そうよ、皇国の印がこの子、そっくりなのよ。
確か、皇国の印の名は【スプリング・エフェメラル】。
❪春の妖精❫という名前だったわ。
皇国の今の
なら、この子は妖精なのね。
きっと守護神様の
ああ私ったら、皇国の
きっと私の苦難に皇国の守護神様が御使い様を、お差し向け下さったのだわ。
せっかく助けてくれようとしてくれていたのに、私ったら怖がるなんて。
早く
み、
え?
きゃあああー₧₡₨₢₯₩₣₩₨、可愛い過ぎる、可愛い過ぎる、可愛い過ぎる!!
ええ?!
『うわあああん、わあん、うわああーん』
た、大変だわ!?
どうすればいいの!?
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