第16話 皇国の姫 (菜の花)

ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ


とある雪道を、一台のソリ付き馬車が駆け抜ける。

馬車の後ろ側には数本の矢が刺さり、何者かに襲われた様子だ。

馬車は本来の街道から、かなり、森の中に外れた雪道に入ってしまっている。

積雪は多く、真っ直ぐ進むのは困難だ。



「大変、アルタクスが馬と転倒して!?」


「オルデアン皇女様、顔を出してはなりません。それと舌を噛みますから、おだまり下さい!」


金色の髪を風になびかせながら、馬車の後ろを見ていたオルデアンといわれる少女は、侍女とみられる、茶髪の清楚せいそなドレスの女性に叱咤しったされ、慌てて馬車の窓から顔を引っ込めた。


「でもテリア、あの者達は一体何者でしょうか?」

「皇国のたみが、私達を襲うはずがありません。間違いなく、他国の間者かんじゃです。まさか、こんな皇都に近い場所まで他国の間者かんじゃが入り込んでいるなんて…」


「アルタクスは大丈夫でしょうか?」

「大丈夫ですよ。皇国、近衛このえの最強剣士です。誰にも負けは致しません」


心配そうにテリアを見上げる少女に、テリアは緊張したキツイ表情を和らげ、少女に優しく声をかける。


「お母さまは…」

「皇妃様も大丈夫です。きっと合流地点におでです。早く皇女様の元気なお姿をお見せしないと、心配してお待ちですよ」


「そうよね。お母さまは、ご無事よね」

「そうですとも。だから皇女様、わたくしの言う事をきちんとお聞き下さい」


グラッ

その時、馬車が大きく左右に揺れた。

「きゃあああ!?」、「皇女様?!!!」


ガッシャーンッ、ドシャアッ


馬車が激しく横転したのだ。

二人は、馬車の中で宙を舞った。



◆◆◆



「うう、テ、テリア?」


オルデアンは、半壊した馬車と雪の間で目を覚ました。

馬車は完全に壊れており、侍女のテリアが見当たらない。


「う、あ、ああ?!」


オルデアンは、激しく動揺した。

何故なら、馬車の中は血だらけであり、オルデアンのドレスにも、血が付いていたからだ。

そして何かを引きずった跡と、無数のけものの足跡。

どうやら馬車は、何か、けもののようなものに襲われたようだった。


「ど、どうしたら…」


年端もいかない幼い少女、ただ一人、森の秘境のような場所に取り残されて遭難状態。

しかも何者かに追われており、泣き叫んで助けを求める事も出来ない。

まして、近くに正体不明の けものが居るかも知れないのだ。


オルデアンは、寒さに震えながら起き上がると、馬車を離れ、一人、森の中を歩きだした。

まだ日は高いせいか、森の中は比較的、明るいのがせめてもの救いか。

彼女は当てもなく森をさ迷い、歩いて行く。



やがて、やや日も傾き、疲れ果てたオルデアンが辿り着いたのは、森の中の小さな開けた場所。

何故か、其処だけは暗い森にあって、日の光が多く降り注ぎ、他よりも僅かに暖かく感じた。

すでに一歩も歩けないオルデアン、そのまま、崩れ落ちるように座り込み、眠ってしまう。

「お母さま……」


最後に見えたのは、金髪の小さな人だったのか。

あるいは、天使だったのか。

疲れと、眠気が見せた幻覚だったのか。

深い眠りに落ちた、彼女には分からない。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



▩カーナ▪アイーハ視点


こんにちわ

皆のアイドル、カーナ▪アイーハです。

もう、すっかり暖かくなりましたね。

春は、もうすぐそこですよ。

ここはいつも常春ですが。

はい。

え?

あれから、どうしたって?

どうしたんでしょ?

私、面倒なんで説明なんてしませんよ。

適当に皆さんで、お話しを考えて下さい。

はい?

作者の怠慢だと?

知りませんよ、作者なんて。

私が脳内で考えてるだけですから。

いつもの様にロダン考え中してるだけです。

はい?

いい加減にしろ?

はい、はい、分かりましたよ。


ええっと、あの後私は、彼女の周りに菜の花の種を蒔いたんです。

そう、いつもの花妖精の力を使いました。

はい?

ええ、そうですよ!

また、いつもの中二病なタンバリン踊りです。

はあ、もっと普通に手をかざすだけとか出来ればいいのですが、何故か、花妖精の力を使おうとすると、身体が勝手にエクササイズしちゃうんです。

まったくお恥ずかしい限りです。

運動になっていいじゃないかですって?

なんですか、その、私が普段はゴロゴロ▪ニートしているみたいな物言いは!

ちゃんと朝、六時には起きてますよ。

六時半からはラジオ体操して、第二までやりますよ。

そんでバッテン目のお魚を焼いて、ヒューリュリ様にドッグフード…もとい、骨付き漫画肉を出して、あ、当然、ヒューリュリ様の体格では、1個じゃ小さいくて食べごたえ無いでしょうから、10個くらい出して上げましたよ。

そしたら、旨い、旨いって、また、涙を流しながら、お食べになっておられました。

餌付けは大成功ですね。

けれど本当ほんと、ヒューリュリ様って普段から泣き上戸っていうか、涙もろいっていうか、よく泣くワンコですよね。

でも、怒ると猛獣顔って、犬なのに喜怒哀楽きどあいらくが凄すぎです。

ああ、勿論、【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】統合後、ヒューリュリ様とはよっく、話し合いましたよ。

『もう、二度とあんな事は致しません。だから許して欲しい』ってね。

で、許しました。

【伏せ】も解除しましたよ。

だって水溜まりが出来るくらい、泣いてるんですもん。

ただ、女の子が加わったので【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の人口密度が上がりました。

なんせ、六畳+直径1メートルの円(0,785㎡)なんで。


だから女の子が起きた時、女の子がヒューリュリ様に怖がらないように、暫くヒューリュリ様にはお散歩に行って貰いました。

まあ、森の見廻りは何時もの日課らしいので丁度良かったようですが、行くまでは大変で、私が女の子から危害を加えられるのではないかと言い張って、中々お尻を上げませんでしたので説得に苦労しました。

それで妥協案で、私が女の子に姿を晒すのはヒューリュリ様がられる時という事に決まりまして、菜の花を蒔いて、ヒューリュリ様が戻るまで隠れている事になったので御座います。


それで空いてる全てのスペースに、菜の花の種を蒔きました。

ああ、種は最初から1000個くらいあったので、全部、蒔いちゃいました。

お陰で【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の中は、菜の花ジャック状態になってしまいましたけど。

それで今、その菜の花に隠れながら、女の子を観賞…いや、そういう趣味はありませんので、(見守っております)が正解です。

そう、文字通り【草葉くさばかげから見守っております】です。




あら?


私、また死んだのかしら?

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