第12話 エーデルワイス
『済まぬな、ご主人。怖がらせてしまったな。だが、ご主人は我らが必ず守るゆえ、安心して欲しい。ご主人には決して指一本、触れさせはせぬ』
「はい、有り難う御座います」
ヒューリュリ様は、大きくて、頼もしくて、モフモフで、ベッドに最高です。
もう、ヒューリュリ様が居ない生活は考えられません。
私の快眠の為、ヒューリュリ様には、なるべく近くに居て貰いたいものです。
でも…本当に、恐ろしい世界です。
私は、こんな世界を生きていかなければならないのでしょうか。
一歳にして、将来の不安に押し潰されそうです。
前世の、家族と過ごした楽しい頃の思い出が、これ程愛おしく思える日がくるなんて、本当に思っておりませんでした。
今になって、あの頃をもっと大切に過ごしておけば良かったと、後悔の念しかありません。
ああ、そうでした。
この想いを忘れない為に、一花咲かせて参りましょう。
「ヒューリュリ様、ちょっとお仕事しますので、花壇から離れて頂けますか?」
『あい、分かった。ご主人』
ヒューリュリ様は、私の行動を不思議に思いながらも、
忠犬ですね。
では、まずエーデルワイスの種を地面に植えてと、それでは始めますか。
私の目の前にあるのは、エーデルワイスの種。
ええっと、エーデルワイスの育て方は?
教えて、教えて、私のナビちゃん。
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日当たり▶暑さには極端に弱い性質があるので、直射日光の当たる場所は避けましょう。 広葉樹・落葉樹の下など半日陰の場所が適しています。
温度▪▪▶15℃~20℃がエーデルワイスの栽培適温です。 涼しくて日照時間が短い環境が良いでしょう。
土▪▪▪▶ エーデルワイスは水はけの良い土が適しています。 弱アルカリ性の土壌を好むため、土壌に石灰などを混ぜると良いでしょう。
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よし、よし、これを、エーデルワイスの、【成育空間システム化】。
「いいかな?いいよね?それじゃあね、今から、今から始めるよ」
私は、ふわっと飛んでエーデルワイスの上、何もない空間からタンバリンを取り出します。
「はいよ、踊るよ、大地の息吹き。あなたが咲くとみんな幸せ。私の声が聞こえたら、どうか応えて下さいな。あなたの幸せが、みんなの幸せ、みんなで、みんなで幸せになろう。タン、タン、タ、タ、タン、タン、タン、タン。タン、タン、タ、タ、タン、タン、タン、タン」
私がタンバリンを叩くと、私の背中のチョウの羽から、銅色鱗粉舞い落ちて、みるみるエーデルワイスを包みます。
ほら、ほら、ほら、ぐんぐん芽が出る、葉が伸びる。
あっという間にエーデルワイスの、綺麗なお花が開花する。
これが私、花妖精、私だけの力です。
「ふう、これでレベルが、上がったかしら」
ピロンッ
『花妖精レベルが7に上がりました。菜の花の種が召喚可能になりました。スキル▶お風呂セットが開放されました』
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名前▪▪▶カーナ▪アイーハ(異世界転生者)
レベル▪▶7(?)
種族▪▪▶花妖精(新種族)
羽根▪▪▶銅色
容姿▪▪▶金髪▪碧眼▪白い肌▪長耳
衣服▪▪▶春のワンピース(淡ピンク)
性別▪▪▶女
年齢▪▪▶1歳(寿命未設定)
身長▪▪▶10cm
体重▪▪▶秘密
バスト▪▶絶壁(成長次第)
ウエスト▶これから(さあ?)
ヒップ▪▶まだまだ(ガンバ)
特技▪▪▶タンバリン応援(?)
スキル▪▶亜空間収納
スキル▪▶銅鱗粉【成育空間システム化】
スキル▪▶種▪球根召喚
スキル▪▶【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】直径1m
スキル▪▶お風呂セット(シャワールーム)
スキル▪▶テイマー
従魔▪▪▶聖獣フェンリル(個体名ヒューリュリ)
召喚可能▶ガーベラ◇チューリップ◇オオイヌノフグリ◇フリージア◇エーデルワイス◇菜の花(種)
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え?
きゃあああーっ、レアスキル、お風呂セットが開放されてます?!
シャワールームだけですが、私の予想が正しければ、待ちに待ったものがあるはずです。
『おお、美しい花が咲いた!これが、ご主人のお力か!?』
「あ、はい。私、花妖精という種族らしく、多分、お花を咲かせるだけしか取り柄がない、人畜無害な妖精?らしいのです」
『ジンチク?は、よくは分からんが凄いことなのだな』
いや、ぜんぜん凄くないんです。
ヒューリュリ様は、言葉の意味が判っていないので仕方ないですが、自分の趣味でやってる事なので、あまり褒められるような事ではありません。
それより、スキルを早く確かめて見ましょう。
そろそろ、
不味いです。
えーと確かゲームと同じなら、声に出せばいいのですよね?
私は息を吸い込みました。
お腹に力を入れて、大きな声で叫びます。
「スキル、お風呂セット!!」
ボフンッ
なんか、白い煙りとともに箱庭の
高さ20センチ、横巾30センチ、奥行き40センチくらいでしょうか。
私サイズです。
ヒューリュリ様が、また不思議そうに見ております。
『ご主人、それは一体、何なのだ?』
「え、あ、おほほほ、私のプライベートルームです。覗きは厳禁ですので、ヒューリュリ様は後ろを向いていてください」
『うむ、後ろを向けばいいのだな。了解した』
ヒューリュリ様は後ろを向いて、此方にシッポを向けました。
シッポが地面に垂れて、何だかションボリしております。
ごめんなさい、ヒューリュリ様。
見えないと思うのですが、このシャワールームの入り口が、ジャバラ式すりガラス扉になっているので、恐らく影が透けてしまうのです。
私はヒューリュリ様に手を合わせながら、シャワールームのジャバラ式すりガラス扉を開けました。
有りました!
予想通りです。
やはり、簡易シャワールームタイプでした。
ふう、これで日々のシャベル穴トイレから開放されました。
よくあるミニホテルの簡易シャワールーム、そこにセットされている物、そう、水洗式トイレです。
ああ、至福の
正直、元三十路間近の私でも、毎日の野ぐ…っは、精神衛生上、よろしい事では有りませんでした。
やはり、丸見えでは落ち着かないですもの。
ジャアーッ…
はた、と、水洗式トイレの水の流れを見て思いました。
この流れていく先は、一体何処に繋がっているのでしょうか。
今世紀最大の謎ですね。
「ヒューリュリ様、もう此方を見てもらっても大丈夫です」
『おお、ご主人。戻られたか。我はこの新しい花の名前が気になっていたのだ。花の名前を教えて貰えるだろうか』
ヒューリュリ様は、花壇の花に夢中でした。
寂しい思いをさせてしまったかと思いましたが、
「ヒューリュリ様、新しい花はエーデルワイスといいます。花言葉は、❪大切な思い出❫です」
そう、私の前世の幸せな日々、それは❪大切な思い出❫なんですから。
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