⑥出会い
最終話「初めて会うあの子」
美莉奈の家から帰宅して時間が経過し、眠る準備を済ませた俺はベッドに入った。
寝る前にスマホの画面を確認すると佑葉から連絡が入っていた。
YUHA 『無事体に戻れました!! ご心配おかけし申し訳ありません(m´・ω・`)m 』
なんとも緊張感のない絵文字に俺は思わず肩の力が抜けてしまう。
心臓が飛び出してしまうのではないかと思う程心配したというのに、当の本人は全く心配していなかったようだ。
旭陽 『まあ体に戻れてよかったよ』
YUHA 『また明日、倒れたらすぐ旭さんのところに行きますね!!』
旭陽 『いやまず倒れるなよ。まあ今回みたいに姿をくらますくらいならすぐ俺のとこまで来てくれ』
YUHA 『はい!! そうします‼︎』
我ながら恥ずかしいメッセージを送ってしまったと自分に呆れるが、二度とあんな思いはしたくないので後悔はしていない。
いつか生身の佑葉と話せるように、これからも努力していこう。
そう考えながら俺は眠りについた。
いつも歩いている通学路。
よく考えてみれば佑葉と出会う前までは下ばかり向いて歩いていた気がする。
佑葉と出会ってからは佑葉がどこからか現れるのではないかと思いながら歩くため、首をあちこちに動かして色々な景色を見るようになった。
自然と表情も明るくなっていたような気がする。
「おはようございます」
「--っ!? だから耳元で囁くのはやめろって何回も……」
俺が振り返ると、そこには佑葉が立っていた。
そう、佑葉が立っていたのだ。
「……佑葉?」
「どうせ幽体離脱できなくなるならもう少し幽体離脱しないとできないこと満喫しとくんだったって少し後悔してます。」
そう言って少し寂しそうな表情を浮かべる佑葉の姿を俺はジロジロと見てしまう。
「え、ちょ、おま、話しかけても大丈夫なのか? 俺のこと見るだけで倒れるんだろ?」
「今まではそうだったんですけど、後ろから旭陽さんを見かけたときに倒れなかったので、これはもしやと思いまして」
「な、なんで急に倒れなくなったんだよ‼︎」
「ん~……。何でですかね。分かりませんっ」
「なんだよその適当なのは……」
佑葉はおれをみても倒れなくなった理由を分からないと言った。
しかし、俺には佑葉が倒れないようになった原因に心当たりがある。
まさかとは思ってたが、やっぱりあの時佑葉は……。
「旭陽さん。一つだけお願いがあります」
「あらたまってどうした?」
「生身の体になっても旭陽さんのところに来ていいですか?」
「……ああ。もちろんだよ」
佑葉が幽体離脱しないようになったら俺との関係は失われてしまうのではないかと危惧していたが、そんな心配は必要なかったようだ。
「ありがとうございます!! これからもよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしく頼むよ」
「あ、あともう一つだけ」
「どうした?」
そう言って一歩踏み出し、俺の目の前までやってきて佑葉は耳元で囁いた。
「旭陽さん、大好きです」
「--っ⁉︎ な、なんだよそれ!?」
「 ほら、早くいかないと遅刻しますよ!!」
「もういっそのこと遅刻してもいいわ!!」
「駄目ですよ~走って走って‼︎」
そう言いながら俺の前を走る佑葉を追いかけなければならないことに面倒臭さを感じながらも、目の前にいる生身の佑葉を追いかけられる幸せをかみしめながら学校へと向かっていった。
10年間1度も会話をしたことがなかったクラスメイトの幽体離脱している姿が急に見えるようになってしまった件 穂村大樹(ほむら だいじゅ) @homhom_d
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