第42話 記者の戦い
オーフェンに対抗しているのはアレックスと警官だけではない。フィオナもペンを振るって戦っていた。スマートフォンを片手に、目立たないようにセントラルパークの森に身を隠し、一部始終をライブ配信している。配信サイトは、彼女が所属し記事も書いている『デルポイ社』のウェブページだ。
「皆さんご覧ください。ライオンの毛皮をかぶった男が、テロリストからニューヨークを必死に守っています。テロリストの数は二人ですが、非常に危険です。彼らは、いったいどうやっているのか、生身で空から爆撃を行っているのです。何か新兵器を使っているのでしょう、一人がもう一人をつかんで機敏に空を駆けまわり、つかまれた方が花のような武器から火の玉を飛ばしています。その威力は――、ぎゃああああああ」
言ってる間に、流れ弾が付近に着弾した。轟音を立てて地が揺れ、火の粉が舞い散る。フィオナは木の葉のごとく吹っ飛ばされて全身土まみれになり、木に背中をぶつけた。彼女が5秒前にいた場所には、焦げ臭い大穴が開いている。
「爆撃はご覧の通りの凄まじさです。いったいだれが何の目的でこんなことをしているのでしょうか。もう少し近づいて、顔を撮影してきます」
フィオナは顔についた土をぬぐうと、武器であるスマートフォンを構え、森と芝生の境目にある木まで走った。その陰に隠れて、オーフェンへスマートフォンのカメラを向ける。オーフェンが犯した罪を白日の下にさらさねばならない。彼は大いなる金と権力を持っているから、殺人や放火のような重罪でも現行犯クラスの決定的証拠がなければ罪をもみ消されてしまう。
だが一方で、アンソニーの顔は映したくない。彼は罪を犯していないし、今やっているのだって、オーフェンにそそのかされただけだ。彼は悪党じゃない。善人だ。付き合いは短いが、それくらいはわかる。教会に駆け込んだ時も嫌な顔せずに助けてくれたし、ボランティアにも積極的だし、アホのアレックスの面倒をよく見てる。この映像で彼に咎が及ばないようにしなければ。
フィオナはオーフェンの顔だけが映るようにスマートフォンを動かす。
映像が配信されているデルポイ社のウェブページは、いつも以上の賑わいを見せていた。
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