第4話

私はサイ王国の第二王女であるセイ

第一王女の予備である私は勇者が居るであろう辺境の村へ送られる事になりました


ここは辺境、いつ魔物に殺されるか分からない場所

しかしここまで自走式馬車により無事に来れていたから私は油断していました


「王女様、もうすぐ次の村です」

「…!えぇ、分かりました」


お付きの騎士様にもうすぐ次の村、と言われ気を引き締めた次の瞬間、馬車が大きく揺れました


「クソっ!何が起こった!?」

「熊の魔物、それも凶魔クラスです!」


この馬車は王族用に何重にも防御魔術のかけられた特性の自走式馬車です


その馬車をここまで揺らす魔物です、魔物に疎い私でも強大な魔物だと分かります


「凶魔クラス…!?クソ…最悪騎士が足止めを…」

「いえ、ここは私達の方が…」


メイド様と騎士様のリーダーが何やら話しています

皆さん自分に出来る事を精一杯しているのです


…しかし私は何も出来ていません、私は何もできないからです


「…!?あれは…王女様!掴まっていて下さい!あの崖を下ります!」


そして最終的には御者様の咄嗟の判断により死にかけながらも何とか私達は魔物から逃げ切りました


そしてその直後襲ってきた強い衝撃で、私は意識を手放しました


そして次に目覚めた時、私は馬車の外で子供二人に囲まれていました


「うぅ…ここは!?貴方たち!何者ですか!」


私は驚いて脅してしまいます

驚く程度でこんな事しか言えない私が嫌になります


「俺はコウ、見ての通り子供だ」

「僕はレイ!コウの友達だよ!」


しかしお二人は怒る事もなく冷静に答えて下さいました、優しい方々に対して私は…


「普通の子供?ではここは本当にキノ村、ということは…貴方達が勇者様ですか!?」


今までは気が動転して気づきませんでしたが…

確かにここから強い勇者の力を感じます


王族なら誰もが持つ勇者を探す力、姉様や兄様ならもう少し確実なのでしょうが…


しかしここまで近づけば私にも誰が勇者かくらいは分かります


「違います」「なにそれ?」


この二人の内、レイ様の方が勇者で間違い無いです

私は、それを告げます


「いえ、貴方からは間違いなく勇者の力を感じます

貴方が勇者ですね




…レイ様!」


私は少しだけ、残酷な事実を伝えました

この二人は友人なのでしょう、しかし勇者は一人


どちらが勇者か伝えるというのはどちらが才能があるのか告げるような物です


更に勇者となれば二人は離れ離れになります

私は…最低です…


「僕が勇者…?勇者ってなに…?」


いえ!弱気になってはいけません!

私は王女です!堂々と!自信に満ち溢れた振る舞いをしなければ…!


「勇者とは魔王を打ち倒す者の事!さぁ!私と一緒に王都に行きましょう!」


あぁ…言ってしまいました

コウ様、助けて頂いた恩を仇で返す様な仕打ち…

しかしこれも役目です…


「俺も連れて行って下さい」


…え?


「え!?コウもついてきてくれるの!やった!」

「おう、お前を一人にはしないぞ〜」


コウ様は、特別じゃないのに、選ばれて無いのに

なんでそんなに優しく出来るの?自信を持てるの?


私は…コウ様に少し嫉妬してまいました

そんな私が嫌で、私は顔を顰めます


「なぜあんたはそんなに渋い顔をしてるんだ?」

「…いえ、貴方は勇者についていく資格があるのだろうかと思いまして」


私は…それでもコウ様を認められませんでした

だからこんな理不尽を言っています


「それなら大丈夫だ、力は強いんでな」

「力が強い程度で…!」


私は嫉妬してまいました、その自信に

その心の強さに


「いやいや、俺の力を舐めるなよ?これでも一人で馬車を押して森を抜けたんだからな」


しかし驚きはこれでは終わりませんでした

コウ様は本当に凄まじい怪力だったのです 


「…は?森を抜けた?この人数が乗った馬車を!?一人で押して!?」


私は驚きます、特別でも無いのにそれ程の怪力…

私は、嫉妬に駆られ、嘘だと決めつけました


「それなら証拠を見せなさい証拠を!」

「…ならあの大木を折るとか?」


そう言うとコウ様は大木を一撃でへし折りました

勇者でも無いのに、一般人なのに、これ程の怪力を一体どれほどの鍛錬を…


「な…あ…本当に…?貴方は勇者でもない普通の人なのにどうやって…」

「…これで連れて行ってくれるか?」


恐らく…コウ様は、レイ様の才能を見抜いていたのでしょう、だからここまで鍛錬を重ねた


ああコウ様、貴方の覚悟は一体どれほどの…


「良いでしょう、サイ王国第二王女の名にかけて、貴方を勇者と離れ離れにはさせません」

「お、おう…そうか…」


私は王族でありながら、父や母に疎まれ、姉や兄の予備でしか無い自分が嫌いです


ですがコウ様は友人に勇者を持ち、その才能を知りその上で鍛錬でレイ様を一人にするまいと…


この日私は決めました、私は勇者ではありませんがコウ様のようにありたい、と









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