直面する魔王の存在

俺は認めたくなかった、父が死後強くなる事を決意したあの日―――――。



死ぬ前なんて、バカみたくヘラヘラ笑ってその日その日を充実して過ごしていた。

そんな姿を俺は許せなかった、影で母は俺を育てる為に仕事を掛け持ち。

疲れてんのに、俺達を笑らわせようと必死で奮闘していた。



父は、何をしたわけじゃない。

ただ"英雄"の肩書きで飲み歩く方、家族が嫌って訳でもない。



ただ、心の奥底で――――嫌気を感じていた。不満を抱いてた、もう少し振り向いてほしかっただけなのにあの日伝えるのも答えるのもなく死んだ。





そんな、そんな奴が―――――? 笑わせんなよ親父。



先程まで天候は晴れていた、しかし俺の心理が映してるのだろうか? 雨がポツラポツラ降り始めた。

怒りの矛先は向けられない、いや、に向ける以外ないんだ。



「ルーク」

「――――」

「ルーク!!」

「うわっ!?」

「どうしたのよ? さっきからぼーっとして」



俺達は場所を移動していた、ロキと変態王が作った特注な防御魔法で霧の中を馬車で走っていた。荷台に俺やフィリス、ソラとフェイとるロキが乗っていた。馬車を導くのは変態王の仕事らしい。

向かってる先は、王都フラワーフォレストっと呼ばれるロキの王城らしい。



「なぁフィリス、肉親が敵だとしたらどうする?」



その問いに誰も答えない、ただロキはただただ言った。



「かつての救世主で英雄、そんな名誉を持つ彼が魔王は信じ難いだろう。だが、貴様はその息子、父を撃つのは過酷だろう」



かもしれない、だけど一発殴りたい。



「あの―、ルークのお父さんって?」



そんなフェイからの質問にフィリスは澄ました声で答えた。



「ルークの父は、英雄アルト」

「「!?」」



流石に驚かないわけは無いだろう、知らない人なんていないわけである。

そもそも、なぜ魔王ゾアークから父アルト魔王になったのか。勇者の血縁関係あるのかさえ聞いたことがない。



確かに父は並外れた魔力を保有していたけど、それはあくまでも召喚獣と一体化での話。

火に関する魔法はどこよりも優れているが、聞いたこと無かった部分あるとしたらしてるのかだった。



「不死鳥―――フェニックスをあの日使ってたな。けど、セラから聞いた話からしたら何やら矛盾してる気がするな」



そう俺は口にした、するとロキはゆっくりとした口取りで言った。



「召喚獣を己に宿す事は即ち、人として死んでいる。その身を焦がして動ける人間はまず居ないだろう。貴様が見たのは不死鳥フェニックスであり、話に聞いていたのはの力そのものだろう。話を要約すると、彼に宿る力はとするが――――下手すればあるとなるな」



フェイ、ソラ、フィリスは俺の方を向いて顔色を伺っている。父の事とロキを殴った罪を無くす為に力を貸すって話を渋々飲み込んだ俺の精神は色々ズタズタだ。



馬車は荒れた道を走り、ガタガタと音を鳴らす。茂みを颯爽に走る馬車は、王都へ一直線でアールズヘルムの世界樹の根っこの真下を通過して地下内部へと走らせる。




沈黙が長く続き、一時間、いや、三時間ぐらい座り長期トンネルを眺めるが如く変わらない風景を眺めていた。

前方がやがて射抜く光の様に、トンネルを照らして抜けると――――視界に映り込む景色はまさに自然界その物だ。



巨大な木の根が、無数に巡り地に向かって突き刺さる様に生える。

天井から木漏れ日の様に優しい光が差し込み草木を癒す。天高く緩く落ちる無数の滝は、生命を与えて虹を描き、この地に住む魔物は優雅にその時間を過ごしている。

たくさんの苔が生えて乾燥防いでいるのだろう、至る所に苔が視界に映り込む。



やがて道は石畳に整備された上を走る、パカラパカラっと馬からの蹄の音がコミカルに響く。それから約十分後――――宮殿のような作りの前に馬車は止まる。



「さて着いた、僕の股間は大変な惨事ですがまぁ気にしなくてもいい。っと―――それよりもやたら静かだね」



変態王は荷台を見に来る、流石に長い道のりを長時間座っていたのでフェイとソラは寝てしまっていた。



「変態王、ご苦労だ」

「だから僕を変態って呼ぶなとあれほど」

「今そうしてる暇は無い、見ろ天井を」



ロキは見上げてそういった。巨樹の根に亀裂が数本と色が変色してるのが見える。



「時間の問題ぽいな」

「やつはかなり強敵さ、作戦を立てるぞ」
























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