道行く作戦

俺はしばらくしてから、フェイと会話する。

巨乳拒絶案が可決されてしまい、作戦が成立出来ず伝言と互いの考えをまとめる事を一任されてしまった。



双方の言い分は、まずあのギルのシールドで霧の中を歩いて俺の剣を回収する。

そして、魔王がいると思われる所に向かうのだが――――簡単に考えて難しいだろう。



何しろ魔物が暴走化してる、付近にいる昆虫類やスライム類は完全に堕ちてる。 迂闊には近づけない。

まぁ、戦ってる姿はないけど実際はちゃんといる。



それよりも、ギルがそれに応じるかどうか。

そこら辺がかなり怪しいのである。

何しろ"学園最強"を剥奪して帳消し、それを俺があの戦いでした事だからな。

まぁ未だに序列は一位のままだけどな。



歯痒い俺は頭を描いて街並みアールズヘルムをただ眺める。




「さて、どうしましょうかねぇ? んー」



軽く吐いた一言に、フェイはこう訊ねた。



「ルーク君、ギルなんかあったの?」



フェイに背を向けたまま俺はこう答えた。



「あったさ、奴は。それと巨人を守る為に戦っただけさ」



フェイは、しばし沈黙してからゆっくり歩きながらこう口を開き話す。



「それは違うよ。ギルは自分が弱かったから強くなろうって思った結果かな。学園最強って呼ばれてから狙う人も、彼を憎しみ妬む人も居たんだよ。それでもから誰よりも強くなりたくて悪になっても、道が逸れたとしても、その気持ちには嘘偽りがないと思う」



俺の真隣に立ち止まって、優しい口調でゆっくりと言った。



? 誰かの為に、守る為に、その力を得て、悪夢を振り払う――――。 例えそれが間違った正義感でも、カッコイイと思うよ?」



そんなもんなのか? って俺は思う。

まぁ正義感同士で争うってのはよくある、俺も違った正義感はある。

ギルはだとしたら、俺はだ。



いや、形が違うが向かう矛先は同じの正義感ヒーローって事か。それが、カッコイイって思えるのか―――――。



俺は軽く頭を描いてフェイにこう言った。



「俺は誰かを守るとか、救うとかそんな大層なのを抱えて生きてないさ」

「そうなの?」

「あぁ、この世界を救えるならなんにだって戦いぬくさ。ただ、それだけだ」



フェイはクスッと笑い出した、俺は何か変なこと言っただろうか?

結構真面目に考えたんだぞこれでも!! って思ってフェイの横顔を見た。



「え?」



そのひとつの言葉で止まった俺、いや、るんだろう。

俺は少しばかりオロオロとした口調で言う。



「な、なんか悪いこと言った? な、なんかごめん」



フェイは涙を指で拭い、そしてゆっくりとした口取りで話しだした。



「いや、なんか思い出しちゃって。お父さんをお思い出しちゃった」

「お父さん?」

「うん、実はこう見えて一国の姫君なんだよ私」

「え、えぇぇぇ――――!?」

「あ、今は無い国の世界よ。亡命みたいな感じに聞こえるかもだけど違うわよ。私のお父さんは騎士団長でいつもカッコイイくさいセリフを言ってたわ」



新事実であるが、まさかフェイは元である。しかも騎士団長の娘だとしたら、剣技が光る強さがあるだろう。

フェイは俺が言った発言が、父親と重なる感じだったのか――――。




「そういう人ほど、色々抱え込んで決して口にしない。 いつも楽しそうにして周りに気を使う。 そんな人はいつもこの世界から去るんだ。 そんな人の背中はいつも孤独のように一枚の冷たい板――――それが今の君よ」



フェイがそう言って、くるりと後ろを振り返る。俺も後ろを振り返るとソラとフィリスが何やら話し合って居る姿が目に止まる。



「そんな冷たい背中に背負ってる君が考えてる事を言い当てるなら、きっと世界を救う方法を模索してるでしょ?」



フェイがそれを言い当てるなんて俺は想像出来なかった。いつも、ほわほわしてるお姉ちゃんドジキャラなイメージ。まさかそこまで考えていたなんてね。

俺は軽く笑いながら「全てお見通しか」っと言い放つとフェイは「んー、やっぱり似てるわよねギルとそうゆうとこ」っと先に見せた涙とは打って変わって笑顔を見せた。



いやいや、あんな凶悪な奴と一緒にされたら悲しいぞ俺!? ってのを言わず飲み込んだ。

ただ、ただ、今の心理を言うならばこうだ。



「今やってる事は正しいのか分かんないな」

「はぁぁぁぁ――――」


そんな一言に、深いため息をしたフェイは俺の頬を抓った。



「いたい!?」

「今やってる事に迷わないの!!」

「ひゃんで?」

「簡単よ、何が正しいなんて"この世界には無い"のよ。何かの矛盾、これが人々の考え方。多様性だから、君は君で貫いて走るのよ」


フェイに両頬を抓らる俺は痛さの中に優しさを感じた。



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